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ワンフロアVS多層階

 小売店舗の場合で、特に大規模になると大きく特徴を分けることになるのがワンフロア型と多層階型かという店舗形態の違い。

 

 基本的にはワンフロアの方が買い回りが良くなるとされる。

 特に複数のジャンルの商品を探す場合、階を移動しなくてよい分、ワンフロアの方が移動距離が短くなりやすい。

 

 例えば「ジュンク堂書店池袋本店」の場合、コミック売場から芸術書売場まで10階分を移動しなければならない。

 「エレベーターがあるじゃん」という声が聞こえてきそうだが、その場合途中の階を飛ばしてしまうため、店にとっての回遊性(注)は落ちることになる。しかも、複数ジャンルの商品を探す場合はエレベーターのメリットは薄れるうえ、そもそもエレベーターの力がより生きるのは4~5階以上のかなりの多層階の場合に限られる。

 

 もちろんワンフロアの場合も、見たい点数が少ない場合、端から端まで歩かせるハメになり、効率が悪くなる可能性は少なくないが、いくつかのジャンルを見る場合で、効率の悪い移動をしなければ多層階より移動距離は少なくなる。

 そして、移動中にも売場を通り続けるため、さらに商品を見せ続けることができるというメリットが大きい。

 

 

でも、コーチャンフォーはやりすぎだと思う。

 

* 店にとっての回遊性 ・・・ 要するに「客が快適に色々売場を回ってくれやすさ」。「回遊性が高い」と言えば「客が自然に店内を隅々まで回ってくれる」という意味。

 コンビニで飲料が必ず奥にあるのは、奥まで客を歩かせてその間にある商品を見せたいから。

2017年11月05日

書店の業態①

書店を商品の扱い方を基準に考えた場合、以下のように分類できる。

なお、この分類は当HPオリジナルで、他所では通用しないので注意。

 

【倉庫型】

本を見せる工夫を省いて、在庫量と探しやすさを特徴としたタイプ。規模が大きく、大型駅の前に立地していることが多い。

多くの本を探して、手に取って吟味できることが何よりのメリット。

反面、油断していると文字通り「倉庫」でしかない退屈な環境になりかねない。

(代表例)ジュンク堂書店、コーチャンフォー

 

【演出型】

商品の見せ方、紹介の仕方に重きを置いたタイプ。面出しやPOPを多用し、独自の品揃え押しを好む。在庫量は限られる。

ハッキリとこの形を目指している企業は多くない。

(代表例)ヴィレッジヴァンガード

 

【セレクト型】

独自の品揃えや雰囲気などを全面に打ち出したタイプ。小規模で付加価値の高い商品をメインに扱い、在庫量は演出型よりさらに少なく、客も立地も選ぶことが多い。

デザイナーや編集者など出身の店主のコンセプトが全面に出ていて、イベントなどを頻繁に行っていたり、雑貨やカフェなどを併設していることも多い。

基本的に当HPの研究対象外。何故なら個人的に苦手だから。

 

【バランス型】

部門ごとに倉庫型・演出型を使い分けたり、適度に演出を取り入れるなど特化しないタイプ。多くの書店がこれにあたる。

 

 

 

2017年11月06日

猫でも分かる!経営指標の読み方

ここでは経営指標の読み方を解説します。「小売業に的を絞って」「ザックリとした」解説ですので「何か知ってるのと違う」と思ったら、そちらが正しいと思っていいと思います。

 

【利益・売上系】

営業利益 主に店で売り買いして得た利益。一番肝心な数字。

     これが赤字か、黒字スレスレだとかなり危険と思っていい。

期純利益 営業利益に一時的な損益(株の売買や会計上の損失処理など)を加えた、最終的な利益。

 

ケース①営業利益が黒字で当期純利益が赤字

 → 本業では稼げていないが、何かしらの一時的な理由で赤字になってしまった

 → 基本的には大丈夫

 

ケース②営業利益が赤字で当期純利益が黒字

 → 本業で稼げていないけど、一時的な理由で黒字になっている

 → 危険!

 

既存比 開店して1年以上経過した店の売上の昨年比。100%を割ると黄色信号。

全店比 開店して1年未満の店も含めた全店の売上の昨年比。

 

ケース③既存比100%未満で全店比100%超

 → 店の売上は減少傾向なのに、店を増やしている

 → 利益が出ていれば、まだいいが、出ていないなら良くない傾向

 

 

【資金系】

キャッシュフロー 現金の出入り。プラスなら現金が増えた、マイナスなら減ったということ。

 基本的に会社の倒産は「赤字」ではなく、「借金返済の失敗」で起こる。借金の返済は現金で行うものなので、利益が出ていてもこれがマイナス続きの場合は現金が無くなってしまい、「黒字倒産」というのもあり得る。

 

回転差資金 仕入れた商品代金の支払いまでの期間とその商品の現金化の時間の差で生まれた資金

 

ケース④ 

代金の支払いが2カ月後の約束で1000円の商品を仕入れた

→ この商品をすぐに2000円で売った

本来の利益は1000円。しかし、2カ月後の支払日までは仕入代金の1000円(つまり合計2000円)が手元に残る。この後半の1000円が回転差資金。

利息がかからず、出店などで仕入の規模を上げるとドンドン増えるので、規模拡大には大いに貢献する。

 

自己資本比率 資産のうち、自分の金で賄った割合。

30%なら30%が自分の金で買ったもの(もしくは金そのもの)。70%が借金。

借金が多いか少ないかを見る指標として使われるが、肝心の基準が業種や規模などによって違い、借金=悪とも言い切れないこともあり、判断にはややコツがいる。。

「悪化し続けるとマズイ」「20%を切るとさすがにマズイ」ぐらいで良い。

 

 

【会計処理系】

減損処理(減損会計) 利益が見込めなくなった資産の価値を下げる処理。損失扱い。

 

ケース⑤

1000万円かけて店をオープン → 赤字続き → この店、1000万円の価値無くね? 

→ 減損処理!!

 

赤字に損失計上のダブルパンチで一気に大ピンチに陥ることが多い。「ゲンソン」は会社にとって恐怖の言葉。大手企業ならば小細工で先延ばしにしたりもするが、大抵悪あがきで終わる。

問題は「利益が見込めなくなった」ことであり、減損は「その結果」と捉えるべきで、減損そのものを怖がるのは間違っている。でも怖いものは怖い。

 

 

 

見るべきものに絞って見ることが肝心

 

2017年11月12日

どうなる?ブックオフ

ここでは皆さんお馴染みの「ブックオフ」を運営するブックオフコーポレーションの2017年3月期決算の結果を分析してみたいと思います。

 

【数字】

営業利益 116百万円(前年+646)、当期純利益-1159百万円(前年-631)

非常に深刻な状況。営業利益は前年の赤字から黒字に戻ったものの、売上高813億円からするとほとんどゼロに近い。減損会計による損失計上で純利益は大幅赤字に沈んだうえ、2017年に入ってからも既存比が100%割れを続けているので、先行きも危うい。

自己資本比率も27.4%(前年-5.7)と危険水域が見えてきた。

 

【政策】

・大型店に注力

2017年期は出店11店 閉店28店と店舗数は減らしたものの、大型店の出店により全店売上は増加。今後は出店を抑制するとのこと。

・ヤフオクに出品

店舗商品をヤフオクに出品。

 

→ 具体策に乏しい。

「ヤフオクに出品」を掲げてはいるが、店舗で見れば分かる通り、対象の商品は明らかに1割にも満たないごく一部。「一部の商品の売上がいくらか上がるかも」という程度の策にすぎない。

仕入の減少を課題の一つに挙げているが、ここにも具体策は無い。大型店に注力して店舗数を減らすのは仕入には逆効果ではないだろうか。

ハッキリした具体策はヤフオクぐらいで、一方で「リユース事業の売上高は減少する見通し」としている。ほとんど戦意喪失状態。

 

【結論】

完全に行き詰っている。

2018年以降も確実に苦戦すると思われ、現時点で打開する望みはない。業界の巨像がもがき苦しむ中で、既にそのすぐ背後には新たな時代の担い手が迫っている・・・

 

 

客側からすれば買わない理由は明らかな気もするが・・・

 

2017年11月15日

デカイ書店ランキング 暫定版①

「イチバン大きい書店はどこか」

本屋好きは誰だって少なからずこのテーマに惹かれている。しかし、意外にも公然とこのデータを示しているトコロは無い。「書店 規模 ランキング」で検索しても古い、しかも中途半端なデータしか出てこないではないか。

では、どうする? 作ろう!!

 

という分けで書店の規模をランキングを作成していきます。下記に記した通り、正確なランキング作成には調査が必要で時間が掛かりますので、現時点では「暫定版」とし、調査が進み次第、順次更新していきます。

 

【基準と定義】

・採用する規模の算定には営業面積を用いる

・営業面積は①各社の公式HPで公にしている数字②ネット記事等に記載されていて同じ数字が3件以上確認された場合の数字 のいずれか(①を優先)を採用する

・文房具、カフェ等、書籍雑誌以外の売場を併設している場合は①ワンフロアで合計3割未満の面積②実態を確認してそうとみなせると管理人が判断した場合 は書店の一部とみなす。それ以外の場合は営業面積から差し引いてカウントする。

 

営業面積 - 書籍雑誌以外の売場面積 = 実質規模

この実質規模の大きさでランキングを作成する。

現在は実地調査が完了していない暫定版として公開する。

 

  店名 実質規模
MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店 6817 未調査
ジュンク堂書店 池袋本店 6612 未調査
宮脇書店 総本店カルチャースペース 6208 未調査
八重洲ブックセンター 本店 5950 未調査
5 ジュンク堂書店 福岡店 5901 未調査
MARUZEN&ジュンク堂書店 札幌店 5321 未調査
7 ジュンク堂書店 三ノ宮店 4959 未調査
7 ジュンク堂書店 那覇店 4959 未調査
9 ジュンク堂書店 大阪本店 4893 未調査
10 丸善 丸の内本店 4777 未調査
11 紀伊国屋書店 新宿本店 4313 未調査
12 金沢ビーンズ 4200 北陸最大
13 丸善 名古屋本店 4112 東海最大
14 コーチャンフォー 新川通店 4100 ワンフロア最大
15 ジュンク堂書店 広島駅前店 4033 未調査

*転載は自由ですが、できれば出典元を、欲を言えばリンクを貼ってもらえると嬉しいです。

 

全体としては丸善ジュンク堂が過半数を占めるイマイチ面白みに欠ける結果。

 

その中で異彩を放つのは3位宮脇書店総本店

ご存知だろうか。管理人が10年以上前に訪れた時は「土足禁止」などの謎仕様で色々ザワつかせた、実は店舗数では全国一を誇る一大巨大書店チェーンが放つ異彩すぎる巨大書店を。

さらにそれが現在ではナナメ上の進化を遂げているという。近く調査に赴く予定なので報告をお待ちいただきたい。

 

12位 金沢ビーンズ (→紹介ページ)

 ハッキリ言って知名度は当ランキング最低クラスと思われるが、実際は立派な大型書店。

 

13位 丸善名古屋本店 (→紹介ページ)

 屋号は丸善だが、実際の様子はジュンク堂系を思わせる完全な倉庫型。池袋店を思わせる一棟型はかなりの上位を期待させるが、ワンフロアが文具売場で順位を落とした。それでも公称在庫数は十分上位クラス。

 

14位 コーチャンフォー新川通

 「北の暴君」ことコーチャンフォーグループの中でも最強を誇る店。「土地が余ってるのか」と言わずに入れないその規模は、梯子を上れば地平線が見えるのではないかと思わせるほど。(言い過ぎ)

 なお、本の扱いを除く当ランキングの手法には反対意見もあるかもしれないが、言っておく。「何でもありならコイツらが上位を独占しやがるぞ」

 

大手の大都市書店が占めるベスト10は当分動くことは無いだろうが、11位以下は地方系が台頭していてアツイ。

 

当HPでもすでに取り上げたコーチャンフォー金沢ビーンズなどは書店好きでも知らない方が多いのでないだろうか。まだ全国には知られざる大型書店が眠っているのかもしれない。

 

次回暫定版②は12月中に首都圏の書店を調査結果を随時公開予定。

 

 

 

 

2017年11月23日

次世代覇者はどっちだ!? ブックオフVSメルカリ

近年、衰退著しいリサイクル業界の現チャンプ「ブックオフ」に対し、飛ぶ猫を落とす勢いの「メルカリ」。駆けるメルカリはブックオフを捉えるのか。その実態を分析した。

 

1.市場規模

 ブックオフ 813億円

 メルカリ 推定1200億円

 ブックオフの売上高は813億円。ただし、これにはフランチャイズ店が入っていないようなので、「ブックオフ」看板の全体の売上高は不明。ただ、フランチャイズを含めても倍するほどでは無いだろう。

 メルカリの売上高は122億円。これはほぼメルカリでの販売手数料(10%)に当たるはずなのでメルカリでの売上規模は約1200億円ほどと推定される。

 既にメルカリ圧勝

 

2.エンタメ系規模

 ブックオフ 推定530億円

 メルカリ 推定300億円

 上の売上高は取扱商品全体だったが、ではブックオフの土俵ではどうだろうか。ハッキリ公表はされていない推測値にすぎないうえに、対象のジャンルも正確に一致はしていないので参考程度にしかならないが、本・CD・ゲームなどのエンタメ系の売上推定値はザックリ以上の様子。

 さすがにブックオフがまだまだ圧勝。とはいえ、ブックオフにとっては65%を占める生命線にして大黒柱であるのに対し、メルカリからすればこれは「相手の土俵」。しかもメルカリにとってはエンタメ系はレディース系に続く「2番目」。少なくともブックオフが浮かれていられる優勢では全くない。

 

3.利益

 ブックオフ -11億円

 メルカリ 30億円

 当期純利益での比較。もはや不要な解説を敢えて加えると、ブックオフは前期も赤字で「何としても避けなければならない状況」での2期連続の赤字。メルカリは初の黒字だが、非上場のイケイケ企業だけに黒字にこだわらず、投資に専念する選択肢もあったであろうところでの黒字。つまり単純な数字の差以上に大きな差を付けてメルカリ圧勝。

 

4.将来性

 強いてイケイケのメルカリの不安要素を挙げれば非上場・新興企業ゆえの不透明さからくる危うさ、そして違法出品などの問題が挙がる。だが、「どうなる?ブックオフ」でも見たようにブックオフの経営の迷走ぶりはもっと具体的である分、深刻であるため、将来性でもブックオフが明らかに不利。

 

5.結論

 既にメルカリ勝利。

 世間的には「いつか追い越すんじゃね?」ぐらいの認識かもしれないが、既にそんな状況では無い。

 状況は「ブックオフVSメルカリ」では無く、「どこまで伸びるかメルカリ」であり注目は「ブックオフ亡き跡のリアル店舗リサイクル業界はどうなるのか」と見るべきだろう。

 

*数字は特に断りの無いものはメルカリは2016年6月決算、ブックオフは2017年3月決算を採用。

2017年12月05日

店舗レイアウト① 回遊性とは

☆回遊性とは

 店舗においては「店の回りやすさ」を指す。「回遊性が高い」と言えば「客がストレス無く、店内を多く回れる」ことを指す。客が店内を多く見て回ってくれる→たくさん商品を見てくれる→売上増!となるので、原則として回遊性は高い方が良いとされる。

では、回遊性に優れた売場とはどういったものか。

 

☆お目当てで釣れ!

 コンビニでは大抵、入ってすぐレジの反対方向から雑誌→飲料→弁当と大外を回って配置されている。(A)たくさん売れる飲料を奥に配置しておけば客は奥まで行くしかない。奥まで行って、入口近くのレジに行くまでに店内をザックリ一回りすることになる。

 

 (B)は(A)より歩く距離が短いうえ、同じ通路を往復している(=見る商品が少ない)ため、回遊性が低いということになる。このように多くの客のお目当て商品を奥に置くことで客を店内奥まで引き込むことが回遊性を高めるための基本中の基本。

 

☆書店では?

 普通、書店で「お目当て」となる商品はコミックか雑誌である。では実際の書店でのレイアウトはどうなっているかというと、コミックは奥にあることも多いが、大抵雑誌はレジや入口近くにある。

 何故か?それはお目当てが奥にあると面倒くさいからだ。

 

☆回遊性か利便性か

 回遊性の追求はやりすぎると不便になってしまう。地上9階のジュンク堂書池袋店のコミック売場が最上階だったら、さすがに足を運ぶ人は激減するだろう。だが、他では扱いが少ない芸術書や洋書を求める人は頑張って最上階まで登山に励んでくれるに違いない。

 また、駅ナカのような場所が限られ、客数が極端に多い場所でも雑誌を奥に置くようなことはしない。店内が混雑してしまい、本を選ぶどころでは無くなってしまえば元も子もない。

 

このようにレイアウトからその店の狙いや特性が見えてくる。

 

 

 

2017年12月10日

本屋の陳列いろいろ

【棚の種類】

・島 

 主に幅の広い通路中央などに平台で出される売場。目立つため、季節や話題の商品、売れ筋などを展開される。

 

・平台

 その名の通り、平らな台の売場。棚に比べて陳列量は少なめになるため、在庫量重視の倉庫型では採用されないことが多い。

 

・エンド 

 陳列棚の端の売場。特に主通路に面した側に、平台で置かれることが多い。その棚の主力や注目商品が展開され、そのまま副通路に客を引き込むことが目的。

 

【商品の置き方】

・棚差し 

 背表紙を向けて棚に入れた、最も標準的な陳列。

 〇 管理しやすい、種類・量共に多く置ける

 ✖ 一つずつの商品が分かり難い

 

・面出し(面陳) 

 本を立てて表紙を正面に向けた陳列。

 〇 商品のアピールには最適

 ✖ 場所を食う、取り出し難い、量置きにくい

 

・平積み 

 本を寝かせて表紙を天井に向けた陳列

 〇 冊数をたくさん置ける

 ✖ 冊数が少ないと見た目が良くない

 

 

 

2017年12月15日

デカイ書店ランキング 暫定版② 「波乱」


「実質規模」及びランキングの定義については

→ こちら「暫定版①」 をご確認ください

  店名 実質規模
MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店 6817 未調査
ジュンク堂書店 池袋本店 6612 最多層階
宮脇書店 総本店カルチャースペース 6208 未調査
八重洲ブックセンター 本店 5950 未調査
5 ジュンク堂書店 福岡店 5901 未調査
MARUZEN&ジュンク堂書店 札幌店 5321 未調査
7 ジュンク堂書店 三ノ宮店 4959 未調査
8 ジュンク堂書店 那覇店 4959 未調査
9 ジュンク堂書店 大阪本店 4893 未調査
10 丸善 丸の内本店 4777 未調査
11 金沢ビーンズ 4200 北陸最大
12 丸善 名古屋本店 4112 東海最大
13 コーチャンフォー 新川通店 4100 ワンフロア最大
14 ジュンク堂書店 広島駅前店 4033 未調査
15 ジュンク堂書店 ロフト名古屋店 3967 未調査

2位 ジュンク堂書店 池袋本店

 開店20年を迎える、長く日本最大の地位を守ってきた代表的な大型書店。全国最多層階となる10階層は何度見ても圧巻。しかも、その内容も本以外は4Fに小さなカフェと8階にイベントスペース(書店の一部と認定)があるだけ。「日本最大」の地位こそ譲ったものの、純粋なる「書の城」としての威厳はいささかも衰えない。

 

圏外 紀伊国屋書店 新宿本店

 まさかの番狂わせ。ジュンク堂書店と並んで老舗大型書店として知られた紀伊国屋書店新宿本店が圏外落ち。公称面積は4793㎡(1450坪)と11位に付けていたが、まずM2階DVD・CD売場を除外。そして実地調査で別館のコミックフロアも「別店舗」と判断し、除外。4階「紀伊国屋ホール・フォーラム」は微妙ではあったが、審議の結果「やや書店との連続性が弱い」と判断され「半数のみカウント」とした。

 結果、実質規模は3762㎡となり、暫定17位に沈んだ。

 さらに反則気味の11フロアは最多層階候補でもあったが、こちらも別館2フロアを除外されたためにジュンク堂池袋に敗北。ランキングから完全にその姿を消したのであった。

 

 代わりに浮上したのは「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」だが、老舗の思わぬ撃沈に安泰と思われていた上位陣も分からなくなってきた。もちろん、未調査の下位陣の結果によっては紀伊国屋書店新宿本店の復活もあり得る。

 思っていたより面白くなりそうな次回更新は東東京を調査。1月上旬ごろ更新予定。



2017年12月22日

デカイ書店ランキング 暫定版③ 「蹂躙」

「実質規模」及びランキングの定義については
→ こちら「暫定版①」 をご覧ください

  店名 実質規模
MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店 6817 未調査
ジュンク堂書店 池袋本店 6612 最多層階
宮脇書店 総本店カルチャースペース 6208 未調査
八重洲ブックセンター 本店 5950 未調査
5 ジュンク堂書店 福岡店 5675 九州最大
MARUZEN&ジュンク堂書店 札幌店 5321 未調査
7 ジュンク堂書店 三ノ宮店 4959  
8 ジュンク堂書店 那覇店 4959 未調査
9 ジュンク堂書店 大阪本店 4893 未調査
10 丸善 丸の内本店 4777 未調査
11 金沢ビーンズ 4200 北陸最大
12 丸善 名古屋本店 4112 東海最大
13 コーチャンフォー 新川通店 4100 ワンフロア最大
14 ジュンク堂書店 広島駅前店 4033 中国最大
15 ジュンク堂書店 ロフト名古屋店 3967 未調査

*転載は自由ですが、できれば出典元を、欲を言えばリンクを貼ってもらえると嬉しいです

*「あの書店が無いじゃないか」という方は暫定版②をご覧ください


5位 ジュンク堂書店 福岡店

 福岡の中心地天神に位置する店舗。大型書店が乏しい九州地方ではずば抜けた規模で、もちろん地区最大。地下1階は文房具・ギャラリーが占めるため、3分の1のみ書店とみなした。


14位 ジュンク堂書店 広島駅前店

 広島駅前の百貨店福屋に入る店舗。中国地方では最大。広島には複合大型書店のフタバ図書が存在するため、広島県周辺は大型店舗には恵まれているが、その他の県は四国に次ぐほど大型書店が少ない。

 ワンフロアとしては僅差で全国2位の規模。足を運んでみるとそこまでの大きさは感じないのがワンフロアの強み。(ただし、蔵書数も80万冊と超大型の中ではやや少なめでもある)


7位 ジュンク堂書店 三宮店

 商店街の中の立地。ジュンク堂書店の創業店舗だが、ランキング的にはパッとしない地味なポジションの店舗だが、「超」がつく大型であることは間違いない。


 蔵書数を重視しているのか、優に2mはある壁際の棚の高さはもはや非常にして非情。踏み台を使っても届かない人もいるだろう高さ。


 今回の調査店舗は全てジュンク堂書店。ランクの変動も無く、王者がその強さを見せ付ける結果となった。このまま超大型書店はジュンク堂一強が続くのか?次回はジュンク王朝に挑むダークホースの実態を暴く。

2018年04月14日

どうなる!?ブックオフ2018前編 業績分析

ここではブックオフ2018年3月期決算の業績結果を解説します。

1.連結業績数値

 

  2016年 2017年 2018年
売上高 765 813 800
営業利益 -5.3 1.1 6.1
当期純利益 -5.2 ー11.6 -8.9

連結 単位:億円

 売上こそ落ちるものの、収益性は少し回復。しかし、依然として赤字・危険域の低収益であることは変わりない。既存店売上前期比も96.5%と低迷しており、先行きは危うく、自己資本比率はほぼ横ばいの27.5%と、さほど余裕も無い。
→ 「単語がさっぱり分からん!」という方はこちらへ

 

2.主な事業別の状況

 

・ リユース店

 要するにいつもの「ブックオフ」のこと。売上705億・営業利益34億円と大型店が好調らしく、これだけ見ると悪くない結果。だが、減損と閉店損失が40億円以上あり、結局赤字。不採算の小型店などの整理を終えたのなら、来期以降は復調が期待できる。

・ ブックオフオンライン

 同名のネット書店。売上61億・営業利益2億円と規模・収益性ともにパッとしない。

・ ハグオール

 聞きなれないが、これは富裕層をターゲットにした百貨店買取窓口。売上高20億・営業利益マイナス8.9億減損4.6億円という今期とんでもない赤字を叩き出した問題の事業。要するに今期の赤字の原因は大半がコイツ。規模は小さいのに損失はデカいまさにガン細胞。

 

業績まとめ 本業もギリギリだが、ハグオールの大失敗でピンチ!

 

3.今後の方針

 

・ リユース店

 単独店(普通のブックオフ)は「地域にあった商材を広げる」複合店(ブックオフプラス・スーパーバザー)は「ハイブランド・高単価にシフトする」ぐらいの方針で、昨年の家電買取参入のような真新しい一手に欠ける。

 それも単独店の家電買取は一部撤退している店もあるし、複合店のハイブランドはハグオールが大失敗中のところ。

 

 前期・今期も大幅な赤字を出したハグオールだが、決算書には「撤退」の文字は見当たらず、早期収益化を目指すとのこと。「新興勢力の勢いを考えると高級路線を捨てられない」ということだろうが、本当に大丈夫だろうか?

 

【現状まとめ】

メルカリを筆頭とする新興勢力にやられて本業が縮小

→ 新興勢力が苦手な高級品で勝負!

→ 大失敗!!

高級路線を続けるにせよ、本業を立て直さなければいよいよ体力が持たない・・・追い詰められたブックオフが放つ挽回の一手とは?

次回「どうなるブックオフ2018!?後編 『ひとつのBook off構想』」

2018年06月26日

どうなる!?ブックオフ2018後編 ひとつのブックオフ構想

【前編のおさらい】

 → 本業はともかく関連事業の大失敗で3期連続赤字でピンチ!

 ○ 詳しくはこちらをどうぞ  

 

ここではブックオフ2018年3月期決算発表の経営方針について解説します。

 

【経営方針① 個店を磨く】

 業績を回復させるには最も大事な事業の根幹となる部分だが、パッとした具体策に乏しいので割愛。ざっくり「リニューアルで取扱商品とか見直すよ」ぐらいの認識でよい。

 

【経営方針② 総力戦で取り組む ひとつのブックオフ構想】

 今回の決算の目玉。「グループ会員IDさせることで全国の実店舗・ネットを連携させる」という政策。具体的な構想は以下の通り。

 

買取 電子買取、アイテム拡充、買取価格の検索

販売 情報オープン化、店舗・ネット併売拡大、ECアイテム拡充、他店・ECの在庫検索および取り寄せ、入荷お知らせ

 

・どの店でも何でも売れるようになる?

 現在は原則、その店の取扱商品しか買い取ってもらえない。何でも買い取ってもらえるようになれば便利なるのは確か。

 

・ ブックオフオンラインが服や家電やらも売り出す?

 いまさら感がすごいので無視。

 

・ 全国のブックオフやネットの在庫を検索・取り寄せが可能に?
 アマゾンの書籍の売上は新刊込みで1200億円ほどと言われる。「次世代覇者はどっちだ!?ブックオフVSメルカリ」で見たように、メルカリはメディア系(本・CD・ゲーム・DVDなど)で約300億円。ただし、どちらも中小・個人の寄せ集めにすぎず、実現すれば中古メディア系500億円規模を一手に扱う業態は唯一無二の存在になれる。

 まさに一発逆転。夢の構想だが本当に可能だろうか?

 

【ひとつのブックオフ構想 課題】

① インフラ

 店同士の在庫をリアルタイムでつなぐ情報システムや物流など膨大なインフラ投資が必要になる。

 

② 人材育成

 拡大する商品や新たなシステムを使いこなす人材を育てる必要があるが、ここを疎かにしてしまうと「テキトー査定で安く買い叩く悪しきブックオフ」のイメージを悪化させることになる。

 

③ フランチャイズ

 ブックオフ店舗の過半数はフランチャイズ。あくまで別会社であるフランチャイズオーナーに自分たちで売れない商品を買い取らせたり、自分の店の在庫をよその店に出荷させることが可能だろうか。

 

結論:実現すればすごいが、現実味は薄い。

 

 

まとめ

現状:そこそこ持ち直してきたブックオフ本体だが、不振の関連事業や小型店舗が足を引っ張ってピンチ

 

 

理想:グループの力を結集して反撃・・・と行きたいが、本当にできるのか?

 

2018年07月23日

本を売るなら?メルカリVS古本屋① 収支編

 ここでは本などを売る場合はメルカリで販売するのと古本屋の買取に出すのと、どちらが得なのかを解説します。

 

【前提条件】

・ メルカリ
 販売手数料は販売価格の10%。売買のやりとりや発送の手間は無視。売れ残りリスクは別に考える。


・ 古本屋
 ネット系の買取サイトを想定。一般的に買取価格は販売相場の20%~30%ほどであることが多いので、ここでは25%と仮定する。販売間もない品はこの掛け率も上がる傾向があるが、ここでは想定しない。また、買取条件(何点以上から買取など)も無視するものとする。

 

・ 売るもの
 本・CD・DVD・ゲームソフトなどある程度市場相場が明確なメディア系を想定。他ジャンルには特殊な想定が必要な場合もあるが、基本的な収支の考え方は同じ。

 

【想定1 ゆうゆうメルカリ便で送れるもの】

 一般的なサイズ(3辺計が60cm・1kg内など)のメディア系はほとんどの場合、175円送れる「ゆうゆうメルカリ便」が最安の配送方法となる。この場合期待される利益額は以下のとおり。

 

  メルカリ 古本屋
500円 225円 125円
270円 68円 68円
200円 5円 50円

(左:販売想定価格 セル:期待利益額)

販売想定価格が500円の場合

 メルカリ 販売想定価格500円 - 販売手数料50円 ー 送料175円 = 利益225円
 古本屋 販売想定価格500円 × 25% = 利益125円

 この場合はメルカリで販売した方が利益額では100円高くなる。販売想定価格が高くなれば利益の差は拡大していく。

 

利益額は販売想定額が低くなるほど差が縮まり、270円で並ぶ。ここが判断の基準。

それ以下の価格では古本屋が優勢。また、メルカリで利益が出る水準は200円

 

【想定2 大型品】
 ゆうゆうメルカリで送れないサイズの場合は送料が大幅に上がる。最適な方法はサイズや重さによりことなるが、ここでは仮に600円と想定すると。

  メルカリ 古本屋
1500円 750円 375円
920円 228円 230円
670円 3円 168円

(同上)

 この場合、想定利益額が並ぶのは920円。想定利益額が大きくなればメルカリが有利になるのは想定1と同じ。

 

 メルカリで利益が出る水準は670円。この価格は送料が上がれば、それに合わせて上がる。

 

【まとめ】

普通サイズ → 270円以上で売れそうならメルカリ

デカイもしくは重い → 920円以上で売れそうならメルカリ

 

 単純に考えれば上記の通りになります。最近ではネット古本屋は買取価格が検索できるため、より正確な額がわかりますし、メルカリの想定利益の計算も慣れれば簡単です。ただ、多数の品を捌きたい場合は、こうしたザックリ判断で仕分けしてしまう方が現実的でしょう。

 今回、考慮しなかった大きな要因として「売れ残りリスク」と「販売価格の決め方」がありますが、この点は別の機会に解説します。

2018年10月15日

「文化の樹を植える」 函館 蔦屋書店

【データ】
所在地:北海道函館市
アクセス:電車 桔梗駅から約徒歩30分
* その他バスなどのアクセスも非常に悪い
地上2階(延床約9500㎡)駐車場650台
郊外複合施設 テナント:スターバックス、ファミリーマート、レストランFUSU、カルディなど
基本営業時間:7:00-25:00


【特徴】
建物のコンセプトは「文化の樹を植える」で2014年グッドデザイン賞などを受賞しているシンプルで親しみやすいものになっている。
書籍スペースの面積は不明だが、3000㎡前後の超大型級の規模と推測される。
1階フロアを貫く直線でまとめられた雑誌売り場や、小部屋に区切られた空間で360度に本棚を配した空間、高さや配置をずらして曲線を作ったり、連続性を変えたり・・・など棚やレイアウトは独創性にあふれながらも機能を損なわない他に例のない秀逸な造り。
休憩、勉強スペースなども多数設けられており、テナント構成なども含めて快適に長時間滞在できる環境になっている。


【感想】
全国様々な書店を巡ってきたが、ベストを挙げるならここ。
とにかく棚のレイアウトが美しくて楽しいので歩くだけでも飽きない。それでいてストレスを感じさせる余計なものが無いので、店内をグルグル回っているだけで、いくらでも時間を過ごせてしまう。
これだけ行き届いていながら、規模は超大型級で探し物にも十分応えてくれるのも嬉しい。
この函館蔦屋書店の素晴らしさを解き明かすのは当HPのテーマの一つでもある。今後の研究報告をお待ちいただきたい。
それにしても、こんな素敵な書店があるなんて、函館市民が羨ましい。函館を訪れた際は観光リストの上位に入れていただきたい。ただし、唯一の弱点、アクセスの悪さには注意が必要。大人しく函館駅からタクシーが正解。


(2017年9月6日訪問)

【関連書籍】
「文化の樹を植える。 「函館蔦屋書店」という冒険」  楽園計画
函館蔦谷書店の設計やコンセプトを解説した一冊。実は完成する前に発行されたものだが、同書店をよく知るうえで欠かせない一冊。

2017年09月11日日記:本屋

「史上の最強の『真理』を知りたいかーッ!」史上最強の哲学入門

史上最強の哲学入門 飲茶 マガジンマガジン【2010】

哲学のテーマをテーマごとに分けて哲学者ごとに時系列にまとめて、その主張を8ページ前後ずつにまとめた哲学入門の解説書。
作者の飲茶氏は脱サラから起業したらしく、学者ではないが、そのためか語り口はとても平易で分かりやすく、どんな活字嫌いでもその骨子を理解できるであろうレベル。

ただし、その書き方には大きな特徴がある。「バキ」成分が非常に強い。
「バキ」シリーズは漫画好きなら誰でも知っている、代表的な格闘マンガで、飲茶氏はその大ファンのため、本書の随所(というか全般)にその要素が織り込まれている。前書きは大半がバキの有名シーンのオマージュである。
ただし、それらは内容に触らない形に限られているので、バキシリーズを知らなくても本書の理解に障りは無い。知っていればクスリとし、知らなければ一部のハイテンションに少しだけ首をかしげるくらいのはず。

長くて小難しくて装いだけご立派な哲学書が馬鹿らしくなるほどの名著。単純な読み物としても入門書としてもオススメ。

2017年10月24日日記:本

「デカァァァイ!説明必要ッ!!」 札幌 コーチャンフォーミュンヘン大橋店

【データ】
所在地 札幌市豊平区中の島1条13丁目
アクセス 地下鉄南北線澄川駅下車徒歩約13分
* 札幌駅から片道30分程度
規模 敷地約7000㎡(書籍約4000㎡)
駐車場750台
営業時間 9:00-23:00

【特徴】
 コーチャンフォーは北海道を中心に書籍・文具・CDを広大な面積のワンフロアで揃えるスタイルの書店チェーン。ミュンヘン大橋店は札幌郊外に位置し、書籍売場面積約4000㎡は「流通在庫は大抵揃えている」という国内最大級レベルの大きさであり、それを「ワンフロア」で、しかもCD・文具売り場も同様の最大級クラスで実現するという驚愕の規模を誇るバケモノ級の巨大店舗。

*解説* ワンフロアVS多層階

 その規模を支える仕組みとして検索機コーナーの設置、島陳列は最低限のシンプルすぎるぐらいのシンプルな区画を採用する典型的な倉庫型。通路も広く、無駄な演出も少ないため、本の探しやすさは文句なく国内最強クラス。

【感想】
 気を付けなければならないのは、「いくら規模が大きくても無いものは無い」という事実。コーチャンフォーに限らず、所詮どう頑張っても品ぞろえではアマゾン様に勝てない。
そのため、大型書店でも中途半端に演出型を取り入れるところも多いが、コーチャンフォーは違う。あくまで品ぞろえと探しやすさの特化にこだわる。このスタイルと心中するんだと言わんばかりに。そう思うと、白に統一された棚は愚直に自身の美学を追求する覚悟と潔さを表現しているように思えてくる。(たぶん違うが)

 倉庫型を極めた最強形態は本屋好きならば必見だろう。ただ、足を運ぶ決意を固めた同志に二つ忠告しておく。
ひとつ、探す本を決めておかないと何もできないこと
ふたつ、新川通り店の方がさらにデカイということ。
グッドラック。

2017年10月27日日記:本屋

「私たちのいなくなった世界で、次の住人を待ちながら。」 人類が消えた世界

人類が消えた世界 アラン・ワイズマン 鬼澤忍訳 早川書房【2009】

【概要】
 アラン・ワイズマンはミネソタ生まれのジャーナリスト。

 本書では、「もし人類が突然地球から姿を消したらどうなるか。」建物は?動物は?自然は?といった疑問を様々な証言を元に様々な視点から予測し、人類が今までにしてきたことを新たな視点で考えさせる。
 
 基本的な構成としてはあるテーマ(例えば原生林、ビルなど)ごとに①それができる前の環境②人類によって変えられた内容③それが人の手で維持される方法(もしくは壊されている内容)や現状 などを説明したのち④人類が消えたらそれがどうなるかを述べる。

 テーマは自然、ビルや原子炉などの人工物、動物など多岐に渡る。
 文体は典型的ないわゆる「翻訳もの」で独自のクセは普通にあるため、好みが分かれるところ。

【感想】
 長い。文庫で500ページ弱の容量はともかく、問題は肝心の「人類が消えたらどうなるか」が短いことにある。全体の割合で行けば恐らく3割ぐらいしかなく、そこにたどり着くまでの(上の内容の)①~③が長い構成のせいで、全体が間延びして長く感じてしまう。
しかし、耐えた末にたどり着いた待ってましたの「人類が消えた世界パート」の記述は面白い。斬新な展開も多く、テーマによっても大きく異なるため、飽きない。前フリが長いことと、翻訳もの独自のドライな文体で驚くような内容を書き切っているため、中々ショッキングだったりもする。
好みは分かれるが、骨太のノンフィクションに飢えているならアリ、の上級者向けの一冊。

【猫情報】
 まさかの展開。我らのおネコ様が捕食者の一例として参戦なさっておられる。
猫は「人間から絶えず餌をもらっていても、狩猟をやめない」強力な捕食者であり、ウィスコンシン州の田園地帯では約200万匹の放し飼いのネコが多ければ年間2億羽以上、アメリカ全土では数十億羽の鳥を殺しているとされる。ネコやりすぎ。
しかもネコは人類が消えた世界でも生き残る。恐るべし。ネコ最強。

2017年11月10日日記:本

「新機軸、実るのか」 新森山 草叢BOOKS

【データ】
所在地 愛知県名古屋市守山区新守山
アクセス JR新守山駅 徒歩8分 名古屋駅から25分程度
規模 売場面積 推定2800㎡
併設 スターバックス、フードコート

【概要】
 2017年2月にアピタ新守山店にオープンしたTSUTAYAの新業態。代官山や函館の蔦屋書店の流れを酌んでいることが分かるオシャレな店内には、座って快適に本が読めるスペースはもちろん、雑貨、レンタル、飲食、はては子供の遊びスペースやセルフレジまで備える何でもアリの滞在型の造り。
そして何よりの特徴は古本の取り扱い。仕切りが無いどころか、同ジャンルの新品と古本の棚が隣に並ぶ形の展開は他に例を見つけるのは難しい。

 立地は名古屋中心部から郊外に出た地元総合スーパーの2階。「アピタ」は名古屋を中心に展開する地元では知られた古い存在だが、立地、建物共にオシャレ書店が幅を利かせるイメージでは無いとの指摘もあるよう。

【感想】
 「ラーメン大盛トッピング全部のせ」という印象。古本と新刊の完全共存は確かに新しいが、新しいのはそこだけで、肝心の本の見せ方は平凡。同じ島に新刊と同じ作者の古本が並んでいるなどの独自の売り方も一部で、見た目のオサレ感に対して見るものはあまり多くない。

 店の規模は大型クラスだが、様々な売場に分けてしまったせいで、書店としては中型クラス。カフェや休憩スペースを重宝したくなるほどの規模には少し足りていないようにも思える。

 古本はあまり回転が良くないようで、フードコートは1店閉店しているなど苦戦の様子も見られた。
 どうかこの意欲的な試みが花咲かせてほしい。次の一手に注目だ。

【猫情報】
雑貨売り場で数点の猫グッズを捕獲成功。こんなトコロに隠れているとは、全く油断ならない。

(訪問日2017.10.30)

2017年11月11日日記:本屋

「北陸最強」金沢 金沢ビーンズ

【データ】
正式名称 明文堂書店金沢県庁前本店
所在地 石川県金沢市鞍月5-158
アクセス 金沢駅からバスで30分前後
開業日 2007年6月30日
規模 約4200㎡ 地上3階 在庫80万札 駐車場250台
テナント タリーズコーヒー

【概要】
 金沢中心地に立地する北陸最大の書店。延床面積4000㎡超は「日本最大級」を名乗っていいとされる(みたいな)ほどの規模。それも、書籍の占める割合からするとまさに指折りのもの。

 建物は建築家迫慶一郎氏のデザインで特徴的な豆型の形をしている。それは店内にいても感じることができるほど特徴的。2008年にはグッドデザイン賞を受賞している。

 品揃えは書籍に重きを置きながら、売場ごとの性格を反映したスタンダードな構成でありながら、メリハリを利かせつつ、最大の特徴の「豆型」を生かした曲線的な動線を取り入れた独創性もあるものなっている。

【感想】
 探しやすさを追求したシンプルなレイアウトの専門書、休憩スペースや演出を多数用意した賑やかな児童書、島やフェアの押しも適切かつ適度。

豆も活かす!
 棚や島の配置が巧みで、連続性があって分かりやすく、かつ単調すぎないため飽きない。最大の特徴である豆型の建物の曲線を活かした棚の配置で変化をつけるなど、大型書店にありがちな「倉庫」すぎて単調になりがちな問題を見事に克服している。棚、壁は白に統一。開放的で圧迫感の印象に仕上がり、これも単調さの解消に一役買っている。

 優秀な店づくりに反して全国的な知名度の低さの原因は「金沢駅立地でありながら、兼六園などの観光名所とは逆側の上、ギリギリ徒歩圏内でない」というあと一歩の残念な立地が大きいのではないか。
 これが観光圏であったらと思うと、とても惜しいが、本屋好きはめげずに足を運んでほしい。

【猫情報】
何と、あの「猫ピッチャー」のミー太郎グッズが販売されていた。恐らくフェアの残り物であろうものだが、取りあえずクリアファイルを1点捕獲。

【購入した本】

「別冊歴史REAL「山城歩き」徹底ガイド」  かみゆ 洋泉社
→紹介ページはこちら

「描かれた病:疾病および芸術としての医学挿画」 リチャード・バーネット 河出書房新社

2017年11月13日日記:本屋

「中京の書籍大倉庫」名古屋 丸善本店

【データ】
所在地 名古屋市中区栄3-8-14
アクセス 栄駅徒歩6分 名古屋駅地下鉄で15分前後
規模 売場面積約4700㎡ 在庫120万冊
地上7階 地下1階
営業時間 10:00-21:00

【概要】
 2015年4月にオープン。全国トップクラスの規模を誇る超大型店。
在庫量を重視した棚構成、集中レジ、シンプルなレイアウトと徹底的な倉庫型。
 2階は文具のみで高級文具なども扱う一方で、コミックの扱いは無く、雑誌も規模の割には扱いは少なめと、書籍に偏重している。

【感想】
 書籍の倉庫に特化した構成には潔さを感じるが、それにしてもあまりに単調。3~7階はほとんど同じ(しかも単純)という思い切ったレイアウトも慣れないと、言うほど探しやすくもない。階層を間違えて行き来することになれば地上7階行き来がツライので、検索機を活用して最短ルートを進もう。

 島はおろか、面出しすら僅かなため、手ぶらでは探しているものしか見つからない。時間をかけて探そうにも休憩スペースは最低限のため、混んでいると、もはや修行。
ただし、使いこなせればその全国最強クラスの在庫量は強力無比。立地も中心市街地のため良好。倉庫として割り切って使おう。

【購入した本】
「文庫 最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか」 ジェームズ・R. チャイルズ 草思社文庫

2017年11月16日日記:本屋

「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっている。」 フェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理 サイモン・シン 新潮文庫【2006】

【あらすじ】
 17世紀、偏屈な天才数学者フェルマーはある定理を示しこう残した。
「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない。」結局フェルマーはこの証明を残すことなく、世を去り、問題だけが残った。そうして、3世紀に渡って繰り広げられることになる、数学者達の長い戦いが始まった。


 レオンハルト・オイラー、ソフィー・ジェルマン、ガブリエル・ラメ・・・この数学史上最大の難問「フェルマーの最終定理」に様々な数学者達が挑み、そして敗れていく。少しずつ後世にその手掛かりを残しながら。
1993年、ついに長きに渡る戦いに決着をつけるかと思われたアンドリュー・ワイルズの証明にも問題が見つかり・・・


 そして何人もの数学者たちが繰り広げたこの戦いは、その激闘にふさわしい、感動的な最期を迎える。
数学を題材にしたノンフィクション。作中にはフェルマーの最終定理の他に様々な数学のテーマが登場するが、いずれも専門用語を極力排した、非常に分かりやすい説明で語られる。


【感想】
 とにかく説明が分かりやすい。
 様々な数学の問題を取り上げるが、「特に強くも弱くもない」程度の頭でもサクサク読み進められる、その説明の分かりやすさは、もはや尋常じゃない。読んでいて痛快なほど。


 さすがに最後のフェルマーの最終定理を解く理論は、よく読んでもピンとは来ないほど専門的で難解が、「置いて行かれる」ような書き方はしない。見事と言うほかない。


 そしてドラマチック。
 物語の最後に、ついに解かれるフェルマーの最終定理だが、その結末は感動的なまでに盛り上がる。やっていることは「数式を証明する」という地味極まりない作業だが、それが「専門家でもないのにここまで盛り上がるものなのか」と思うほどの、それもまさにノンフィクションならではの感動を味わえる。
多少の数字アレルギーでも、もちろん数字が好きならなおさら読む価値ありの名作。


【サイモン・シン著・その他のオススメ
「暗号解読」(上下巻)新潮文庫
 古代文字からエニグマ、RSA暗号、量子暗号など暗号技術の歴史を紐解く。内容は高度だが、やはり解説は抜群に分かりやすい。

2017年11月16日日記:本

「わたしのギョーザをとって食べた人へ」 われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う

われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う 土屋賢二 文春文庫【2011】

【概要】
 土屋賢二は元お茶の水女子大学文教育学部学部長の哲学者。


 当書は哲学とはほとんど何の関係もない、笑ってもらうためだけの書かれたエッセイ集。有名大学の教授(当時)の著作とはとても思えないほど、とにかく内容が無く、その代わりにただただ笑える。


【感想】


爆笑。以上。


【土屋賢二著のその他のオススメ】
「猫とロボットとモーツァルト 哲学論集」 勁草書房
 爆笑エッセイを多数世に放った土屋賢二氏の数少ないまじめな哲学論集。主な哲学のテーマを論理的に語る。個人的に座右の一冊。

2017年11月22日日記:本

「老舗の本領炸裂」名古屋 三省堂書店名古屋本店

【データ】
所在地 愛知県名古屋市中村区名駅1-1-3 タカシマヤゲートタワーモール8F
アクセス 名古屋駅直結
規模 3306㎡ 在庫数80万冊
営業時間 10:00-21:00
テナント BOOKS&CAFE 雑貨店


【概要】
 2017年4月にオープンした老舗書店三省堂の新店。ワンフロア3000㎡級で名古屋駅直結の使いやすさと好アクセスを兼ね備えた万能店。


 構成では売場によって特徴を出しつつ、探しやすいシンプルな構図ながら、要所で島陳列などを使用して変化を付けて飽きさせない。各売り場で選書が光るも、ゴテゴテした演出は排して見やすくなっているなど、お手本と言って良いほどの完成度の高さを誇る


【感想】
 演出控えめで押しつけがましさがなく、さりげなくても気が付くとカゴに商品が入っている見事な選書には熟練の知識と技術が見て取れる。「あのケンドー・カシンがついに本を出した」というニュースをとらえて平置きできるなど、さすがは老舗といったところ。デカイさに頼りがちな誰かさんとは大違いだ。


 休憩スペースが必要ない買い回りの良さも非常に魅力的。スッと訪れてサクッと買って帰れる。本は本来、家で読むものであり、本屋は本来、滞在する場所では無い。すぐに読書スペースを設けたがる誰かさんとは違うところだ。


 近くにあるとイチバン嬉しいのはこういう店だろう。教科書に載せたい優良店。


【購入した本】
ドローン鳥瞰写真集 住宅街・団地・商店街 小林哲朗 玄光社
超 面白くて眠れなくなる数学 桜井 進 PHP研究所
ツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで ケンドー・カシン 徳間書店
超画期的 木工テクニック集 ―電動工具に頼らずに熟練職人の技術を再現する― 杉田豊久 スタジオタッククリエイティブ
(訪問日 2017年11月1日)

2017年11月23日日記:本屋

「思考実験の世界へようこそ」 頭の中は最強の実験室

頭の中は最強の実験室 学問の常識を揺るがした思考実験 榛葉豊 化学同人【2012】

【概要】
 頭の中だけで行う「思考実験」を紹介、解説する。

 取り上げる思考実験の対象は様々な年代、分野(哲学、科学、数学など)人物(ガリレオ、ニュートン、アインシュタインなど)に及ぶ。


 平易で専門用語を極力排した解説は非常に分かりやすく丁寧で短くまとまっている。


【感想】
 ビギナー向け学術書としては分かりやすさはピカイチ。


 ただ、取り上げるテーマが多いせいで一つのテーマが短く、掘り下げが浅いため、パンチが弱い。
 この手のビギナー向けによくある「分かるか?すごいやろ(ドヤ)感」が無いため、イラッとさせられることなく、サクサク読める点も好印象。ただ、「紹介」に徹していて読者に問いかけたり考えさせたりする書き方ではないため、難しい内容を理解できた時の爽快感は薄い。


 エッセイ以上学術書未満を期待するならベストバイ。

2017年11月24日日記:本

「かつての寵児、その今」 ヴィレッジヴァンガード町田路面店

【データ】
所在地 東京都町田市原町田4-5-15
アクセス 町田駅徒歩5分
規模 1000㎡前後 地上2階
営業時間 10:00-0:00


【概要】
 ご存知「西の渋谷」こと町田駅近くに位置する、ヴィレッジヴァンガードとしてはかなりの大型単独店。


 雑貨中心の1階、書籍中心の2階の構造。1階は服やバッグなど幅広い商品を取り扱い、2階書籍売場は同店らしくサブカル系を中心にテーマごとに分かれて雑貨と共陳列されている定番のスタイル。混然とした売場が特徴のヴィレッジヴァンガードだが、大型店だけあって同店は広めの通路とハッキリとした区仕切りがされており、買い回りやすい売場となっている。


【感想】
 かつて業界で一世を風靡したヴィレッジヴァンガード。数年ぶりの訪問だったが、「大人しくなったか」という印象。混然としていた売場はすっきり整頓され、買い回りは良くなった点は表かもできるが、得意の関連販売も「ミニ四駆にミニ四駆雑誌」といった良く言えば定石通りだが、かつてのはっちゃけぶりは薄まった印象も。伝家の宝刀手書きPOPも「マンガ大賞2017年11位」「永久保存」など同様の様子。


 そもそも「本屋なのか」で物議をかもすヴィレヴァンだが、この大人しさは進化なのか停滞なのか。今後の研究課題として取り上げなければならない必要を感じる。今、ヴィレヴァンに何が起きているのか、じっくり掘り下げていきたい。


(訪問日 2017年11月20日)

2017年12月08日日記:本屋

「ブームと言ってもいいでしょう。」 「山城歩き」徹底ガイド

「山城歩き」徹底ガイド 洋泉社MOOK【2016】


【概要】
 山の地形を利用して築いた城である全国の「山城」を特集したムック。100名城を網羅したデータファイルから、数ページかけて見どころを特集した記事、初心者向けの準備i や心得などを解説した文字通りの「徹底ガイド」。


 主要な山城を解説した特集ページではその構造や見方を実際の写真や地図を豊富に使って解説。歴史的背景やアクセス方法などの解説も充実で実践的な内容。


【感想】


 「山城が今、人気です。」で始まり、不穏な空気を漂わせる冒頭。(城ブームは数年前から聞いていたが、山城は初耳だった)しかし読み進めて安心。初心者向けにもしっかり基本から解説してくれる。興味は持ったが知識ゼロだったところで手に取ってみたが、新たに興味を持つには十分な内容だった。


 特集ページはかなり濃厚な解説で、初心者は読んでも全くピンとこない。実際に足を運ぶか、その経験が必要だろうが、山城への期待を育てるそのディープさを感じさせる。


 旅行やハイキングなどが趣味の方には旅の選択肢を深める期待をこめて手に取ってみるこをオススメできる。

2017年12月09日日記:本

「試金石」 ブックオフ自由が丘駅前店

【データ】
所在地 東京都目黒区自由が丘2-11-23
アクセス 自由が丘駅 徒歩1分
規模 約660㎡ 2階
営業時間 10:00-23:00


【概要】
 大型化を進めているブックオフの中では規模は中型程度だが、その立地からか、積極的なリニュールを重ねてきた店。1階はコミック、CD、DVD、ゲームなど2階は書籍、雑誌を扱う。この規模の他店と比べて玩具系の扱いが少なく、書籍の割合が大きい。


 最大の特徴は現在は店内で独立させたスペースでブランド品などを買い取りを行っていること。2017年10月10日放送の「ガイアの夜明け」ではこの取り組みが対メルカリの今後力を入れていく事業として紹介された。特に土地柄、数十万円の高級品の買取も行っていることを強調していた。


【感想】
 元々、ブックオフでは各店舗で買取ジャンルが異なるが、ブランド品の扱いは大型店ならそれほど珍しくは無い。(公式HPではブランド品の扱いのある店舗は100店以上ヒットする)しかも、同店のブランド品の扱いは最近始まったワケではなく、2014年からグループ会社のハグオールが出店する形で始めていたものをリニューアルしてブックオフとして継続させている。


 つまり、ブックオフとしては継続して取り組んできた高級品買取のフラグシップモデルという位置づけで試行錯誤をしていると見られる。


 書籍売り場は品揃えの多さは大型店クラス。アクセスの良さもあり、実は古本屋としての機能が普通に高いのもコッソリした特徴。上の高級買取り以外は標準的な造りで使いやすい。悪く言えば面白みに欠ける。

2017年12月12日日記:本屋

「世界の果てから果てまで旅するんだ、アタシ達」 ヴィンランド・サガ20巻 

ヴィンランド・サガ 20巻 幸村誠 アフターヌーンKC【2017】


【あらすじ】
 11世紀ヨーロッパ、戦いに生きるヴァイキングたちのを世界で、主人公トルフィンが紆余曲折の果てに、未開の地「ヴィンランド」を目指す物語。
20巻ではヴィンランド開拓のための資金を得るためにミクラガルドを目指すトルフィン一行がヨーム戦士団の後継をめぐる戦いに巻き込まれてしまう。


【感想】
 少し売れるとすぐに休載したり、ダラダラ引き延ばしたりする作品が多い中で、とてもしっかりとした作品。しっかりと練られたストーリーは読みごたえ抜群。この20巻ではそれまで様々に入り乱れていた人物や出来事が、主人公トルフィンの元に一気に収束し、これからのクライマックスを期待させる見事な展開を見せている。


 加えてキャラクター達も魅力的。
 ヤンキー→無気力→悩めるイケメンとキャラ替えの達人主人公トルフィン、コミカルからシリアスまでこなすナイスキャラ・トルケル、 降って湧いた強キャラかと思いきや思わぬ関係を匂わせてきたライバル・ガルド、出番なしかと思いきやキッチリ絡んできた策士クヌートなど、個性的なキャラ達が濃いストーリーを元にしっかり絡み合う。見ごたえ抜群。


絵もコマ割りも見やすく、キャラクター達の表情豊かな表現もシリアスシーンでの迫力やカッコよさなどもしっかり描かれており、綺麗なだけでない上質な作画を楽しめる。戦闘シーンでは残酷な描写もあるが、それを強調したクドさがないのですっきり読める。


 もっと注目されていい完成度の高い作品だが、不思議とアニメ化もされない不遇な扱いを受けている。何やってんだアフターヌーン。
(2018年4月追記)祝アニメ決定!

2017年12月13日日記:本

小さな人気店をつくる! 移動販売の始め方

小さな人気店をつくる! 移動販売の始め方 平山晋 同文館出版【2015】


【概要】
 著者平山晋氏は移動販売独立支援を手掛ける「アイドゥネット」の代表であり、移動販売「蛸魂焼き」の店主でもある。


 支援も販売も手掛ける実務家の視点から移動販売の始め方、成長のさせ方はもちろん、その後のリニューアルなども含めた移動販売に関するノウハウを惜しみなく披露している。


【感想】
 とても実践的。この手の本ではコンサル系立場の人が書いた「一般論中心」のものであったり、成功した人が語る「成功談」どまりだったりすることもあるが、多数の支援も行っている方の著作だけにしっかり実践的なノウハウとして語られている。


 実際に現場で出くわすトラブルや売上を伸ばすための具体的な心構えなどを豊富に紹介できている点などは専門家ならでは。


 文章は専門用語が出てこない平易で読みやすく、それでいてその詳細さは「読み物」というよりは「ちょっとしたマニュアル」レベル。それでいて「移動販売を役立てたい、喜ばれたい」という熱意が全体から伝わってくる、


 移動販売そのものに興味がある方はもちろん、それ以外の方にも何かヒントになる考え方や生き方が見つかるかもしれない。そんな熱意ある良書。

2017年12月18日日記:本

「絶滅危惧種・町の本屋さん」 久美堂本店

【データ】
所在地 東京都町田市町田6-11-10
アクセス 町田駅すぐ
規模 約1000㎡ 地上4階
営業時間 10:00-20:00


【概要】
 久美堂は開業70年以上を数え、町田・神奈川に6店舗を展開する書店。
 

 西東京の中心地のひとつである町田駅前すぐという好立地。
特に学生を対象にしたとされる品揃えは2階ではフロアの半数が文具。専門書よりも参考書、教科書、新書よりも文庫を重視など、偏りのある品揃え。
 雨の日サービスや楽天ポイントなどのサービスも提供するなど、独自の取り組みも見られる。

【感想】
 良い意味での「地元の本屋さん」。1000㎡級で総合的な品揃えにすると「結局何も無い売場」になりがちのところ、地元のニーズに合わせた品ぞろえを実現している様子がうかがえる。これは大型化に対抗できずに数を減らし続けている小型書店の目指すべき方向性の一つを示しているかもしれない。何故なら、「地元のニーズに合わせた品ぞろえ」を実現するためには長い時間と技術が必要だから。

 店内は狭めのフロアで4階と買い回りは良くないが、古いながらも手入れの行き届いた店内は親しみやすさを感じる。


 本当に惜しまれるべき店の形がここにあるのかもしれない。


【購入した本】
「現代にゃん語の基礎知識2018」 自由国民社 【2017】

2017年12月20日日記:本屋

「判決の瞬間、二人はまったく同じ反応をした。ニヤっと笑ったのである。」 そして殺人者は野に放たれる

そして殺人者は野に放たれる 日垣隆 新潮文庫【2006】

【概要】
 「心神喪失」による免罪について10年掛かりで調べたリポート。


 夫婦を強盗殺人した罪が「犯行中覚醒剤使用中であったため」減刑される。
 心神喪失を判断する精神鑑定の不確かさ、そしてそれを根拠に殺人者を減刑もしくは罪を問われることすらなく世に戻している日本特有の異常な事実を、被害者家族の生々しい証言なども交えて具体的に取り上げる。

 第三回新潮ドキュメント賞受賞作品。

【感想】
 怖すぎる。
 容疑者の罪を軽減する精神鑑定の曖昧さ、そしてその心神喪失者を処遇する施設が無いという問題、遺族への余りの配慮の無さ、その大元となる刑法39条の問題などを取り上げ、余りにもずさんな法体制と余りにも無残な遺族への扱いの実例が多数挙げられる。「これは本当にノンフィクションなのか」というほどの衝撃を受け続けることは間違いない。

 専門用語も使われるが、説明が的確で、誰にも読み解ける文章。ただし、作者の批判は「お寒いかぎり」「何を言っているのか」と遠慮が無く、苦手な人には抵抗があるかもしれない。ただ、その主張はほとんどが文句無しで正しい。
 

 どんなサスペンスよりも背筋が凍る思いが味わえる。何といってもこれは現実なのだから。

 本作の元が刊行されたのは2003年。現在、この問題はどうなったのかを想像すると、さらに恐ろしくなってくる衝撃作。

2017年12月21日日記:本

「もし、成功しようとする決意が十分に固ければ、失敗することはない。」 世界最強の商人

世界最強の商人 オグ・マンディーノ 角川文庫【2014】

 

【概要】

 物語仕立ての自己啓発書。

 

 紀元前ごろの中東。商人として大成功を収めた大富豪のハフィドは、ある日突然、側近に自身の会社と資産をすべて処分するように命じる。戸惑う側近にハフィドは自身の成功の基となったある巻物とその約束について語りだす。

 

 物語の中で書かれる、ハフィドを成功に導いた「巻物」の内容が自己啓発の内容となる。その内容は正しい心がけと強い決意を促す言葉が繰り返し続く。

 

 そして物語は巻物の後継者を探すハフィドの元に熱意ある若者が現われ、思わぬスケールの結末を迎える。

 

【感想】

 初めてにして、現在も唯一読破した自己啓発本だったが、こういうものなのだろうか。

 物語パートは短いながらも非常に分かりやすい「良いお話」に仕上がっている。感動的な展開ではあるが、「それは無いだろ」と思ってしまう人もいるかもしれない。(自分は後者だった)

 

 自己啓発のメインとなる巻物の内容は非常に強い言葉が、詩的表現なども交えて分かりやすく、呪文のように繰り返される。具体的なビジネステクニックではなく、「心がけ」ややる気を促すような内容だが、その説得力には誰しも圧倒されるだろう。特に気持ちを奮い立たせたい人にはこれ以上なく向いている。

 

 冒頭は「賞賛の数々」として世界中の社長やら会長のお勧め文が10本も載っている。まさに世界の成功者御用達。らしい。

2018年04月11日日記:本

「最先端は最南端にあった!」 ブックスミスミ オプシアミスミ店

【データ】

所在地 鹿児島市宇宿2丁目3番5号 オプシアミスミ1階アクセス JR指宿枕崎線宇宿駅より徒歩約10分 鹿児島中央駅から約20分

規模 約5000㎡(書籍以外含む)ワンフロア

営業時間 10:00-24:00

 

【概要】

 ブックスミスミは鹿児島県を中心に5店舗存在し、同店は鹿児島中心地から郊外のショッピングセンター「オプシアミスミ」に入る大型複合書店。書籍の他に文具・CD・DVD・雑貨を扱う。

 ワンフロア1500坪の九州屈指の規模だが、清潔で広めの通路や多めの休憩スペースなどで、ゆったりとした空間に仕上がっている。

 

【感想】

 複合型だが、書籍の売場も十分な広さがある。その上で、棚の高さや通路の広さが適切で圧迫感が無いうえ、島や、変形型の棚・曲線レイアウトなどの配置も絶妙で店内を回るのが非常に快適。棚を高くし、通路を狭めてひたすら在庫数だけにこだわる誰かさんとは異なる。(悪いとは言っていない)

 

 全体のレイアウトも新刊や児童書・専門書など分野ごとに売り場をコンセプトで仕切りつつ、全体としての調和も損なわずにまとめている。めったにお目に掛かれない美しい売場。本屋の最先端は鹿児島にあった。

2018年05月04日日記:本屋

「おいしさを決定づける、たったひとつのルールがあった。」 カレーの教科書

カレーの教科書 水野仁輔 NHK出版【2013】

【概要】
 水野仁輔氏は出張料理ユニット「東京カリー番長」の調理主任を務めるカレー研究家。

 本書では「秘伝」や曖昧さに紛れて不透明になってしまっているカレーのテクニックをルール化し、イメージどおりのカレーを自在に作れるように説明した、文字通りの「教科書」。

 カレーの作り方の基本となる「ゴールデンルール」を中心に、スパイスや具材・調理法などカレーに作りに必要なあらゆるものの使い方・組み合わせ方を一つずつ詳しく検証・解説する。

【感想】
 「教科書」の名に相応しい、充実した非常に内容。特筆すべきは分類や検証が充実している点で、例えば玉ねぎ一つとっても、炒め方や時間などを詳しく何種類も検証した結果を載せて、「こう炒めれば美味しくなる」ではなく、「こう炒めればこうなるから、こうしたいならこうするべき」と理解できる。そんな解説が本書の8割ほどを占める。カレー好きなら何度も読み返してボロボロにしたい充実ぶり。


 注意すべきはあくまで「作り方の教科書」であり、「美味しいカレーの作り方」ではないこと。レシピも載ってはいるが、レシピ本ではない。作りたいカレーのイメージを自分で持っていな人や、そもそも手間をかける気が無い人には向かない、入門だがハイレベルな内容になっている。

結論 : スパイスカレーの入門に最善の一冊。

2018年07月10日日記:本

「成功は失敗のもと」ヨークベニマルの経営

ヨークベニマルの経営 五十嵐正昭・新津重幸 商業会【2009】

 

【概要】
 ヨークベニマルは東北・北関東に220店を展開する7&Iグループのスーパーマーケット。売上高4290億円は規模としては中堅だが、長年堅調な業績を続けており、単体での競争力では評価が高い。

 本書はヨークベニマルの元取締役である五十嵐氏による解説本。ヨークベニマルは規模と好調な業績に関わらず、マスコミへの露出が極端に少ないことでもしられており、本書はほぼ唯一の専門書として貴重でもある。
 内容は会議録を元にしてヨークベニマルの理念や仕組みを解説する形をとっている。経営者の生の声を紹介しているのでとても貴重で信憑性が高い。


【感想】
 ヨークベニマルの成功は強い理念によって生まれたものであることが良く分かる。それは本書で紹介される数々の言葉から端的に読み取ることができる。

「(前略)マスコミに登場することが従業員の慢心、油断、おごりになる」(p8)
「成功は失敗のもと」(p56)
「どうせやるならば難しい方法を採る」(p153)
「どうしましょうか?と言って社長のところに来るな!こうした、と言うなら聞こう」(p198)

 かつて自分が所属してきた会社ではいずれもマスコミに登場することで浮かれあがっていたのを覚えているし、過去の成功体験に引きずられ続けて改革を怠って失敗した経営者も見てきた。それぞれは一般的にも言われる教訓でもあるが、それを実践できることは類稀なリーダーシップと組織力なのだと思った。

 どの企業でも言う「お客様のために」とは具体的にどういうことか。同業のみならず学ぶことが多い一冊。

2018年08月21日日記:本

「新しい小さな本屋」ブックオン四街道店

【データ】
所在地 千葉県四街道市大日466−32

規模 約271㎡

テナント ブックオフ、ハードオフ、オフハウス、ソフトバンク

営業時間 10:00-20:00

オープン 2017年10月30日

【概要】
 リサイクルショップ大手のハードオフが新たに開いた小型書店。同じテナントには同社のハードオフ・オフハウス・ブックオフが入る、大型駐車場を備える郊外型の店舗。  品揃えはコミック・雑誌が中心で次いで絵本、文庫などを扱うなど、回転の良いジャンルを優先させている。実用書などは最低限。ブックオンは2018年3月に西長岡(新潟)、7月に白井富士(千葉)にもオープンしており、白井富士店はよりコミックに特化した品揃えとなっている。


 ブックオフも運営するハードオフコーポレーションだが、ブックオフとは別会社(創業者が友好関係にあり、かつて業務提携していた過去がある)。ブックオフを運営しながら、ブックオフを差し置いて「ブックオン」を名乗ってオープンさせるという複雑な関係になっている。

 

【感想】
 長い年月をかけてジワジワ減少している小規模書店だが、そんな中で新しい形を見せてきたのが同店。  店の形態としては駅構内小型店舗に近いが、立地は郊外という点が新しい(解説)。店単体は本専門だが、建物全体ではメディア・リサイクルなどの繋がりで複合化している。本を買いに来たのなら、ブックオンの品揃えだけでは不満だろうが、そこはブックオフがある。古本であまり流通しない新刊はブックオン、それ以外はブックオフでという意表をついた、同社ならではの補完関係ができている。  面白い発想の戦略だが、皮肉なのはこれに挑戦したのが本業のブックオフではなく、ハードオフであること。元々複合店が得意な同店の更なる進化形となるのか、注目。

(解説) 普通、小型店は「新刊を中心とした買いたいものを買いに行くところ」であるので、便利だがワザワザそこを目的に行くところではないので郊外においても成功しにくい。来店しやすい駅前などの便利な立地であることが前提となる。大型店は(ショッピングセンターに入る中規模店は施設全体で)「本屋自体(もしくはショッピングセンター全体)を目的に出向き、滞在するところ」であるから、郊外でも成立する。

2018年09月12日日記:本屋

船橋競馬場フリーマーケット大幅縮小

【縮小の経緯】
 船橋競馬場のフリーマーケットの歴史は古く、正確な時期はわかりませんが、古参の参加者に聞くところによると20年以上前から開催されているとか。また、昔の賑わいは現在とは比べ物にならなかったとも聞きます。

 私が出店し始めた2年前のころは概ね毎週土日に駐車場の大通り側での開催で、多ければ100店以上の出店がある、千葉県の会場のなかでも群を抜く規模の会場でした。

 しかし2019年の4月から普段使われていない駐車場奥のスペースを中心とした場所に開催場所が変わり、さらに2020年4月からは土曜日のみの開催となりました。原因は駐車場利用者の増加と聞きますが、この2年で大幅な縮小です。
 
【出店者としての本音】
 私が千葉県を中心とした大型フリーマーケットに出店するようになって初めて、そして最も多く出店した会場であり、もっとも身近な会場はこの船橋競馬場です。正直寂しい気持ちもありますが、出店者としては「しかたない」という本音もあります。

 なぜなら2019年の変更から来場者の数の減少が進み、会場としての魅力が急速に薄れてきているからです。そのうえ、運営にも何か手を打とうという気配が感じられません。
 なぜ来場者を減らしたのか。大通り沿いから大型スーパー横という2019年の開催場所の変更は少なくとも大きなマイナスとは思えません。フリマアプリの台頭でしょうか?それでは堅調な会場があることの説明がつきません。


 長い伝統を持ち、大型商業施設に囲まれている好立地という、手の打ちようがないはずがない好条件の会場が、さほど惜しまれずにしぼんでいくのは寂しい結果です。

 

 

 

 来場者がほとんど高齢者ということ日もある。さすがにキツイ。
(C)いらすとや

2020年04月08日日記:日記

牧の原モア

4/25 緊急事態宣言が明けて貴重な開催となった印西牧の原モアでのフリーマケット。毎度、出店の形が微妙に変わる牧の原モアですが、今回は9時までお客さん入場禁止&15時まで出店者撤退不可という独自ルール下で実施されました。

 入場制限のお陰で準備がしやすく、撤退の管理が徹底されればお客さんの入りにも良い影響がありそうなので、歓迎。

2021年04月29日日記:日記