「成功は失敗のもと」ヨークベニマルの経営

ヨークベニマルの経営 五十嵐正昭・新津重幸 商業会【2009】

 

【概要】
 ヨークベニマルは東北・北関東に220店を展開する7&Iグループのスーパーマーケット。売上高4290億円は規模としては中堅だが、長年堅調な業績を続けており、単体での競争力では評価が高い。

 本書はヨークベニマルの元取締役である五十嵐氏による解説本。ヨークベニマルは規模と好調な業績に関わらず、マスコミへの露出が極端に少ないことでもしられており、本書はほぼ唯一の専門書として貴重でもある。
 内容は会議録を元にしてヨークベニマルの理念や仕組みを解説する形をとっている。経営者の生の声を紹介しているのでとても貴重で信憑性が高い。


【感想】
 ヨークベニマルの成功は強い理念によって生まれたものであることが良く分かる。それは本書で紹介される数々の言葉から端的に読み取ることができる。

「(前略)マスコミに登場することが従業員の慢心、油断、おごりになる」(p8)
「成功は失敗のもと」(p56)
「どうせやるならば難しい方法を採る」(p153)
「どうしましょうか?と言って社長のところに来るな!こうした、と言うなら聞こう」(p198)

 かつて自分が所属してきた会社ではいずれもマスコミに登場することで浮かれあがっていたのを覚えているし、過去の成功体験に引きずられ続けて改革を怠って失敗した経営者も見てきた。それぞれは一般的にも言われる教訓でもあるが、それを実践できることは類稀なリーダーシップと組織力なのだと思った。

 どの企業でも言う「お客様のために」とは具体的にどういうことか。同業のみならず学ぶことが多い一冊。

2018年08月21日|日記:本