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船橋競馬場

ここではフリーマーケット会場としての船橋競馬場を解説しています。

 船橋競馬場は古くから行われてきた千葉を代表する大規模会場。2018年までは毎週土日開催だったが、2019年から規模が縮小し、2020年は土曜日の開催となる。
 運営元が日程によって「ラズベリーとオタカラ・ネットの共催」と「東京リサイクル運動市民の会」に分かれており、前者の方が出店基準が緩く、食品や屋台などが出る。ただし、客数には特に変わりは無い。


1.会場データ
住所 〒273-0013 千葉県船橋市若松1丁目2−1
アクセス 京成線 船橋競馬場駅 徒歩5分 JR京葉線 南船橋駅から徒歩10分。有料大型駐車場(1日500円)あり。
立地 駅近くで、敷地内にOKストア、徒歩圏内に大型ショッピングセンターのららぽーと、ビビット南船橋がある。
環境 全面アスファルトの地面に、日を遮る建物が無いので夏場は非常に暑い。
トイレ 敷地内の場外馬券場は10時から、OKストアは8時半から使用可能。最寄のコンビニは徒歩5分ほど。

2.来場者データ
客数 ☆☆ 大会場としては安定して少なめ。
客層 高齢者中心。駅近の大会場としては常連中心なので、連続で出店しても効果が薄いことが多い。買い物客も常連が多いためか、場合によっては極端に集客できることがある。
売れ筋傾向 高齢者向け・安売り

3.出店データ
出店数 最大約100店 通常50店程度の出店数で、締め切ることは稀。
出店形態 横向き2m×5m 縦向き7.5m×2m (3000円。別に駐車場代500円が必要)
手持ち 2.5m×2m(2000円。敷地内の駐車場から搬入可能)
出店者の傾向 20店ほどは毎日出店している常連。出品物には大きな偏りはないが、業者やベテランが多く、一般家庭や作家系が少ない。



4.特徴
おすすめポイント
・ アクセスが良く、周囲に店も多いので、週末の過ごし方の一つとして便利
・ 利用しやすいので出店・買い物共に初心者向け

注意点
・ 規模と開催頻度の割りに変化に乏しい
・ 業者やベテランが多いので掘り出し物を探すような面白みに欠ける
・ 集客力の割りに出店料は高め

2020年06月20日カテゴリ:フリーマーケット

フリーマーケットの基本

 ここではフリーマーケットの基本を解説しています。内容は主に千葉・東京・埼玉の大型会場のものを前提にしています。

1.開催時期
 主に日曜日。一部、土曜日や祝日に開催している会場もある。 開催頻度は月に一度が多く、中には不定期・毎週などの会場もある。各運営元のHPなどで確認できる。年末・春休み期間は開催が多く、最も開催が少ないのは夏休み期間。


2.開催時間
  9:00~15:00という時間に公表されている場合が多いが、実状は異なる。
 
 開始時間
 出店者が商品を並べ次第、購入可能なため、実際は搬入時間から始まっている。多くの場合は開催時間の1時間前つまり8時ごろから買い物が可能になり始める。とにかく探し尽くしたい場合はココから攻める。

 終了時間
 出店者のうち、開催時間の終わりまで出店している者はごく一部。早ければ13時ごろから退店する店が出はじめる。天気や客足によっては早まることがあり、真夏の14時に行っても、ほとんど誰も残っていないことがあるほど。 基本としては13時までには足を運びたい。


3.準備  
 
 入れ物(マイバックなど)
 基本的には袋は店が用意しているものだが、あるとスムーズ。
 
 小銭 こちらも基本的には店が用意しているので不要だが、一般の出店者だと万札・五千円札はキツい場合もあるため、千円札ぐらいは用意しておきたい。
 
 天気予報
 必須。開催時間中、3分でも本降りの雨が降れば中止。小雨でも10分降れば中止なので、事前にチェックしておこう。

 暑さ対策(夏季) 会場は駐車場や公園など野外が中心のため、真夏で無くても焼けるほど暑い場合もある。

4.買うまでの手順
 
 ① 店まで行く 基本的に会場は自由に出入りできるので、準備や手続き等は不要。まずは一通り回ってみよう。

 ② 手に取ってみよう 気になる商品があれば手にとってよく状態を確認する。分からないことは気軽に店の人に聞こう。店主の前で気が引けることもあるが、ここを怠ると後で後悔することが多い。しっかりやるべき。
 店のスタイルによっては、手に取った時点で話しかけられることが多いので、心の準備を。

 ③ 価格の確認 価格が明記されていなければ、店の人に確認。値切るなら交渉開始。好き嫌いが分かれるところだが、これがフリーマーケットの醍醐味でもあるので、挑戦してみよう。
 * 値切りについては別途解説予定

 ④ 購入 「これください」と購入する。

5 .どんな商品があるのか

 服(古着)  どの会場でも一番多い、メイン商材。特に多いのが子供服。相場は普通の服ならば100円程度、上着で500円ぐらい。船橋競馬場では毎回、とんでもない量を扱う業者がいるなど、会場や時期によって特色も出る。

 玩具 児童向けのものが中心。トレーディングカードから大型遊具までジャンルも価格も様々。一般家庭から出ているものではレア物が混じることもあるので、面白いところ。

 手作り品 アクセサリーなどの小物やバックや服飾など。手作りと言ってもプロ級の高度なものを扱っている場合も多い。こちらが目当てならば大規模会場よりも、手作り品専門のフリーマーケットに足を運んだほうが遥かに充実しているのでお薦め。

 家電 家庭の不要品から、専門業者のジャンク品に大別される。格安なうえ、珍しいものが見つかることが多い反面、品質が問題となる。掘り出し甲斐のあるところ。

 食品 農産物や菓子や調味料、軽食を扱うキッチンカーなどが出ていることもある。会場によっては出店禁止の場合もあるうえ、それほどお買い得でもない場合が多い。

 その他、服飾雑貨・工具・DVD・家具など、禁止されていないものならば、ほぼ何でも売られている可能性があると思っていい。会場によって異なるので、気になる場合は出店規約を確認してみよう。
 

 

6.ポイント

 あくまで「何があるか分からない」というスタンスで行くこと
 
× ガッカリしがち
 →  「ブランドの子供服を安く買いたい」「プラモデルが欲しい」など「具体的に何かを探しに行く」
 → 「とにかく安くて、それなりのものを買いたい」「他で買うより得をしたい」


○ エンジョイできる

 → 「何か面白いものがあればいいな」「俺の目利きで掘り出し物を見つけてやるぜ」
 → 「世間話でもしつつ、まったり過ごそう」「暇つぶしにプラついてみるか」


2020年03月11日カテゴリ:フリーマーケット

「新しい小さな本屋」ブックオン四街道店

【データ】

所在地 千葉県四街道市大日466−32
規模 約271㎡
テナント ブックオフ、ハードオフ、オフハウス、ソフトバンク
営業時間 10:00-20:00
オープン 2017年10月30日

 

【概要】

 リサイクルショップ大手のハードオフが新たに開いた小型書店。同じテナントには同社のハードオフ・オフハウス・ブックオフが入る、大型駐車場を備える郊外型の店舗。

 品揃えはコミック・雑誌が中心で次いで絵本、文庫などを扱うなど、回転の良いジャンルを優先させている。実用書などは最低限。ブックオンは2018年3月に西長岡(新潟)、7月に白井富士(千葉)にもオープンしており、白井富士店はよりコミックに特化した品揃えとなっている。


 ブックオフも運営するハードオフコーポレーションだが、ブックオフとは別会社(創業者が友好関係にあり、かつて業務提携していた過去がある)。ブックオフを運営しながら、ブックオフを差し置いて「ブックオン」を名乗ってオープンさせるという複雑な関係になっている。

【感想】

 長い年月をかけてジワジワ減少している小規模書店だが、そんな中で新しい形を見せてきたのが同店。

 店の形態としては駅構内小型店舗に近いが、立地は郊外という点が新しい(解説)。店単体は本専門だが、建物全体ではメディア・リサイクルなどの繋がりで複合化している。本を買いに来たのなら、ブックオンの品揃えだけでは不満だろうが、そこはブックオフがある。古本であまり流通しない新刊はブックオン、それ以外はブックオフでという意表をついた、同社ならではの補完関係ができている

 面白い発想の戦略だが、皮肉なのはこれに挑戦したのが本業のブックオフではなく、ハードオフであること。元々複合店が得意な同店の更なる進化形となるのか、注目。

 

 

(解説)
 普通、小型店は「新刊を中心とした買いたいものを買いに行くところ」であるので、便利だがワザワザそこを目的に行くところではないので郊外においても成功しにくい。来店しやすい駅前などの便利な立地であることが前提となる。大型店は(ショッピングセンターに入る中規模店は施設全体で)「本屋自体(もしくはショッピングセンター全体)を目的に出向き、滞在するところ」であるから、郊外でも成立する。

 

 

2018年09月12日ランク:☆カテゴリ:本屋

「成功は失敗のもと」ヨークベニマルの経営

ヨークベニマルの経営 五十嵐正昭・新津重幸 商業会【2009】

【概要】

 ヨークベニマルは東北・北関東に220店を展開する7&Iグループのスーパーマーケット。売上高4290億円は規模としては中堅だが、長年堅調な業績を続けており、単体での競争力では評価が高い。

 

 本書はヨークベニマルの元取締役である五十嵐氏による解説本。ヨークベニマルは規模と好調な業績に関わらず、マスコミへの露出が極端に少ないことでもしられており、本書はほぼ唯一の専門書として貴重でもある。

 

 内容は会議録を元にしてヨークベニマルの理念や仕組みを解説する形をとっている。経営者の生の声を紹介しているのでとても貴重で信憑性が高い。

 

【感想】

 ヨークベニマルの成功は強い理念によって生まれたものであることが良く分かる。それは本書で紹介される数々の言葉から端的に読み取ることができる。

 「(前略)マスコミに登場することが従業員の慢心、油断、おごりになる」(p8)

 「成功は失敗のもと」(p56)

 「どうせやるならば難しい方法を採る」(p153)

 「どうしましょうか?と言って社長のところに来るな!こうした、と言うなら聞こう」(p198)

 かつて自分が所属してきた会社ではいずれもマスコミに登場することで浮かれあがっていたのを覚えているし、過去の成功体験に引きずられ続けて改革を怠って失敗した経営者も見てきた。それぞれは一般的にも言われる教訓でもあるが、それを実践できることは類稀なリーダーシップと組織力なのだと思った。

 

 どの企業でも言う「お客様のために」とは具体的にどういうことか。同業のみならず学ぶことが多い一冊。

2018年08月21日ランク:☆☆☆カテゴリ:本

「おいしさを決定づける、たったひとつのルールがあった。」 カレーの教科書

カレーの教科書 水野仁輔 NHK出版【2013】

【概要】

 水野仁輔氏は出張料理ユニット「東京カリー番長」の調理主任を務めるカレー研究家。

 

 本書では「秘伝」や曖昧さに紛れて不透明になってしまっているカレーのテクニックをルール化し、イメージどおりのカレーを自在に作れるように説明した、文字通りの「教科書」。

 

 カレーの作り方の基本となる「ゴールデンルール」を中心に、スパイスや具材・調理法などカレーに作りに必要なあらゆるものの使い方・組み合わせ方を一つずつ詳しく検証・解説する。

 

【感想】

 「教科書」の名に相応しい、充実した非常に内容。特筆すべきは分類や検証が充実している点で、例えば玉ねぎ一つとっても、炒め方や時間などを詳しく何種類も検証した結果を載せて、「こう炒めれば美味しくなる」ではなく、「こう炒めればこうなるから、こうしたいならこうするべき」と理解できる。そんな解説が本書の8割ほどを占める。カレー好きなら何度も読み返してボロボロにしたい充実ぶり。

 

 注意すべきはあくまで「作り方の教科書」であり、「美味しいカレーの作り方」ではないこと。レシピも載ってはいるが、レシピ本ではない。作りたいカレーのイメージを自分で持っていな人や、そもそも手間をかける気が無い人には向かない、入門だがハイレベルな内容になっている。

 

結論 : スパイスカレーの入門に最善の一冊。

2018年07月10日ランク:☆☆カテゴリ:本

「もし、成功しようとする決意が十分に固ければ、失敗することはない。」 世界最強の商人

世界最強の商人 オグ・マンディーノ 角川文庫【2014】

【概要】

 物語仕立ての自己啓発書。

 紀元前ごろの中東。商人として大成功を収めた大富豪のハフィドは、ある日突然、側近に自身の会社と資産をすべて処分するように命じる。戸惑う側近にハフィドは自身の成功の基となったある巻物とその約束について語りだす。

 物語の中で書かれる、ハフィドを成功に導いた「巻物」の内容が自己啓発の内容となる。その内容は正しい心がけと強い決意を促す言葉が繰り返し続く。

 そして物語は巻物の後継者を探すハフィドの元に熱意ある若者が現われ、思わぬスケールの結末を迎える。

【感想】
 初めてにして、現在も唯一読破した自己啓発本だったが、こういうものなのだろうか。

 物語パートは短いながらも非常に分かりやすい「良いお話」に仕上がっている。感動的な展開ではあるが、「それは無いだろ」と思ってしまう人もいるかもしれない。(自分は後者だった)

 自己啓発のメインとなる巻物の内容は非常に強い言葉が、詩的表現なども交えて分かりやすく、呪文のように繰り返される。具体的なビジネステクニックではなく、「心がけ」ややる気を促すような内容だが、その説得力には誰しも圧倒されるだろう。特に気持ちを奮い立たせたい人にはこれ以上なく向いている。

 冒頭は「賞賛の数々」として世界中の社長やら会長のお勧め文が10本も載っている。まさに世界の成功者御用達。らしい。

2018年04月11日ランク:☆☆カテゴリ:本

「判決の瞬間、二人はまったく同じ反応をした。ニヤっと笑ったのである。」 そして殺人者は野に放たれる

そして殺人者は野に放たれる 日垣隆 新潮文庫【2006】

【概要】

 「心神喪失」による免罪について10年掛かりで調べたリポート。

 

 夫婦を強盗殺人した罪が「犯行中覚醒剤使用中であったため」減刑される。

 心神喪失を判断する精神鑑定の不確かさ、そしてそれを根拠に殺人者を減刑もしくは罪を問われることすらなく世に戻している日本特有の異常な事実を、被害者家族の生々しい証言なども交えて具体的に取り上げる。

 第三回新潮ドキュメント賞受賞作品。

 

【感想】

 怖すぎる。

 容疑者の罪を軽減する精神鑑定の曖昧さ、そしてその心神喪失者を処遇する施設が無いという問題、遺族への余りの配慮の無さ、その大元となる刑法39条の問題などを取り上げ、余りにもずさんな法体制と余りにも無残な遺族への扱いの実例が多数挙げられる。「これは本当にノンフィクションなのか」というほどの衝撃を受け続けることは間違いない。

 

 専門用語も使われるが、説明が的確で、誰にも読み解ける文章。ただし、作者の批判は「お寒いかぎり」「何を言っているのか」と遠慮が無く、苦手な人には抵抗があるかもしれない。ただ、その主張はほとんどが文句無しで正しい。

 

 どんなサスペンスよりも背筋が凍る思いが味わえる。何といってもこれは現実なのだから。

 本作の元が刊行されたのは2003年。現在、この問題はどうなったのかを想像すると、さらに恐ろしくなってくる衝撃作。

2017年12月21日カテゴリ:本

小さな人気店をつくる! 移動販売の始め方

小さな人気店をつくる! 移動販売の始め方 平山晋 同文館出版【2015】

【概要】

 著者平山晋氏は移動販売独立支援を手掛ける「アイドゥネット」の代表であり、移動販売「蛸魂焼き」の店主でもある。

 

 支援も販売も手掛ける実務家の視点から移動販売の始め方、成長のさせ方はもちろん、その後のリニューアルなども含めた移動販売に関するノウハウを惜しみなく披露している。

 

【感想】

 とても実践的。この手の本ではコンサル系立場の人が書いた「一般論中心」のものであったり、成功した人が語る「成功談」どまりだったりすることもあるが、多数の支援も行っている方の著作だけにしっかり実践的なノウハウとして語られている。

 実際に現場で出くわすトラブルや売上を伸ばすための具体的な心構えなどを豊富に紹介できている点などは専門家ならでは。

 

 文章は専門用語が出てこない平易で読みやすく、それでいてその詳細さは「読み物」というよりは「ちょっとしたマニュアル」レベル。それでいて「移動販売を役立てたい、喜ばれたい」という熱意が全体から伝わってくる、

 

 移動販売そのものに興味がある方はもちろん、それ以外の方にも何かヒントになる考え方や生き方が見つかるかもしれない。そんな熱意ある良書。

2017年12月18日カテゴリ:本

「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっている。」 フェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理 サイモン・シン 新潮文庫【2006】

【あらすじ】

17世紀、偏屈な天才数学者フェルマーはある定理を示しこう残した。

「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない。」

結局フェルマーはこの証明を残すことなく、世を去り、問題だけが残った。そうして、3世紀に渡って繰り広げられることになる、数学者達の長い戦いが始まった。

 

レオンハルト・オイラーが、ソフィー・ジェルマン、ガブリエル・ラメ・・・この数学史上最大の難問「フェルマーの最終定理」に様々な数学者達が挑み、そして敗れていく。少しずつ後世にその手掛かりを残しながら。

 

1993年、ついに長きに渡る戦いに決着をつけるかと思われたアンドリュー・ワイルズの証明にも問題が見つかり・・・

そして何人もの数学者たちが繰り広げたこの戦いは、その激闘にふさわしい、感動的な最期を迎える。

 

数学を題材にしたノンフィクション。作中にはフェルマーの最終定理の他に様々な数学のテーマが登場するが、いずれも専門用語を極力排した、非常に分かりやすい説明で語られる。

 

 

【感想】

とにかく説明が分かりやすい。

様々な数学の問題を取り上げるが、「特に強くも弱くもない」程度の頭でもサクサク読み進められる、その説明の分かりやすさは、もはや尋常じゃない。読んでいて痛快なほど。

さすがに最後のフェルマーの最終定理を解く理論は、よく読んでもピンとは来ないほど専門的で難解が、「置いて行かれる」ような書き方はしない。見事と言うほかない。

 

そしてドラマチック。

物語の最後に、ついに解かれるフェルマーの最終定理だが、その結末は感動的なまでに盛り上がる。やっていることは「数式を証明する」という地味極まりない作業だが、それが「専門家でもないのにここまで盛り上がるものなのか」と思うほどの、それもまさにノンフィクションならではの感動を味わえる。

 

多少の数字アレルギーでも、もちろん数字が好きならなおさら読む価値ありの名作。

 

【サイモン・シン著・その他のオススメ】

「暗号解読」(上下巻)新潮文庫

 古代文字からエニグマ、RSA暗号、量子暗号など暗号技術の歴史を紐解く。内容は高度だが、やはり解説は抜群に分かりやすい。

 

2017年11月16日カテゴリ:本

「『社会調査』の過半数はゴミである」 「社会調査」のウソ

「社会調査」のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ 谷岡一郎 文藝春秋【2000.6】

【概要】

谷岡 一郎は、日本の社会学者で学校法人谷岡学園理事長。大阪商業大学学長・総合経営学部教授。

 

本書ではタイトル通り「社会調査の過半数はゴミ」と称し多数の社会調査を実名で批判し、何故ゴミか、どうゴミかを誰にでも分かる平易な言葉と論理で説明する。

実例 → どこが間違いか考えてください → こういう理由でここが間違っています。ここはこうするべきです。 という明快な構図を繰り返す。

 

さらにゴミを生み出す背景を解説、対策として「サイテーション・インデックス」やリサーチリテラシー教育などを提唱する。

 

【感想】

何よりもその社会調査批判の解説の分かりやすさと妥当さが群を抜いている

この種の本では、例えばアマゾンでは熱心な揚げ足取りにいそしむ暇そうなレビューが不必要に目につくものだが、それすらほとんど見当たらない。

 

そして、その社会調査に潜んでいる誤りの多さと巧妙さ、悪質さに驚かされる。これを読んだ直後から新聞や記事を読む目が変わること間違いない。

いつか当社で正社員を雇い入れることになった時は必ず当書を読ませるようにしたいほど貴重な知識を与えてくれる。。

 

ただ一つ残念なのは口が悪いこと。タイトルの「ゴミ」といい、冒頭で「この本は少々過激な内容である」と述べるなど、ゴミ社会調査を躊躇なく批判・罵り・挑発を容赦なく叩き込む。大学の学長がこれでいいのかというレベルで、この点では拒否反応を示す方がいても無理はない。

やっぱり社員教育に使うのは少し考えたほうが良いかもしれない。

 

やや古い本だが、その説得力は一切色あせない。作者が提唱するように、リサーチリテラシーとして誰もが読むべき一冊。

2017年11月13日ランク:☆☆☆カテゴリ:本

「北陸最強」金沢 金沢ビーンズ

【データ】

正式名称 明文堂書店金沢県庁前本店

所在地 石川県金沢市鞍月5-158

アクセス 金沢駅からバスで30分前後

開業日 2007年6月30日

規模 約4200㎡ 地上3階 在庫80万札 駐車場250台

テナント タリーズコーヒー

 

【概要】

金沢中心地に立地する北陸最大の書店。延床面積4000㎡超は「日本最大級」を名乗っていいとされる(みたいな)ほどの規模。それも、書籍の占める割合からするとまさに指折りのもの。

 

建物は建築家迫慶一郎氏のデザインで特徴的な豆型の形をしている。それは店内にいても感じることができるほど特徴的。2008年にはグッドデザイン賞を受賞している。

 

品揃えは書籍に重きを置きながら、売場ごとの性格を反映したスタンダードな構成でありながら、メリハリを利かせつつ、最大の特徴の「豆型」を生かした曲線的な動線を取り入れた独創性もあるものなっている。

 

【感想】

探しやすさを追求したシンプルなレイアウトの専門書、休憩スペースや演出を多数用意した賑やかな児童書、島やフェアの押しも適切かつ適度。

 

豆も活かす!

棚や島の配置が巧みで、連続性があって分かりやすく、かつ単調すぎないため飽きない。最大の特徴である豆型の建物の曲線を活かした棚の配置で変化をつけるなど、大型書店にありがちな「倉庫」すぎて単調になりがちな問題を見事に克服している。棚、壁は白に統一。開放的で圧迫感の印象に仕上がり、これも単調さの解消に一役買っている。

 

優秀な店づくりに反して全国的な知名度の低さの原因は「金沢駅立地でありながら、兼六園などの観光名所とは逆側の上、ギリギリ徒歩圏内でない」というあと一歩の残念な立地が大きいのではないか。

これが観光圏であったらと思うと、とても惜しいが、本屋好きはめげずに足を運んでほしい。

 

【猫情報】

何と、あの「猫ピッチャー」のミー太郎グッズが販売されていた。恐らくフェアの残り物であろうものだが、取りあえずクリアファイルを1点捕獲。

 

【購入した本】

「別冊歴史REAL「山城歩き」徹底ガイド」 かみゆ 洋泉社

 →紹介ページはこちら

「描かれた病:疾病および芸術としての医学挿画」 リチャード・バーネット 河出書房新社

 

(訪問日2017年10月31日)

 

 

 

2017年11月13日ランク:☆☆☆カテゴリ:本屋

「デカァァァイ!説明必要ッ!!」 札幌 コーチャンフォーミュンヘン大橋店

【データ】

所在地 札幌市豊平区中の島1条13丁目

アクセス 地下鉄南北線澄川駅下車徒歩約13分

* 札幌駅から片道30分程度

規模 敷地約7000㎡(書籍約4000㎡)

駐車場750台

営業時間 9:00-23:00

 

【特徴】

 コーチャンフォーは北海道を中心に書籍・文具・CDを広大な面積のワンフロアで揃えるスタイルの書店チェーン。ミュンヘン大橋店は札幌郊外に位置し、書籍売場面積約4000㎡は「流通在庫は大抵揃えている」という国内最大級レベルの大きさであり、それを「ワンフロア」で、しかもCD・文具売り場も同様の最大級クラスで実現するという驚愕の規模を誇るバケモノ級の巨大店舗


*解説* ワンフロアVS多層階

 

その規模を支える仕組みとして検索機コーナーの設置、島陳列は最低限のシンプルすぎるぐらいのシンプルな区画を採用する典型的な倉庫型。通路も広く、無駄な演出も少ないため、本の探しやすさは文句なく国内最強クラス

 

【感想】

気を付けなければならないのは、「いくら規模が大きくても無いものは無い」という事実。コーチャンフォーに限らず、所詮どう頑張っても品ぞろえではアマゾン様に勝てない。

そのため、大型書店でも中途半端に演出型を取り入れるところも多いが、コーチャンフォーは違う。あくまで品ぞろえと探しやすさの特化にこだわる。このスタイルと心中するんだと言わんばかりに。そう思うと、白に統一された棚は愚直に自身の美学を追求する覚悟と潔さを表現しているように思えてくる。(たぶん違うが)

倉庫型を極めた最強形態は本屋好きならば必見だろう。ただ、足を運ぶ決意を固めた同志に二つ忠告しておく。

ひとつ、探す本を決めておかないと何もできないこと

ふたつ、新川通り店の方がさらにデカイということ。

グッドラック。

(2017年9月4日訪問)

2017年10月27日ランク:☆☆カテゴリ:本屋

「史上の最強の『真理』を知りたいかーッ!」史上最強の哲学入門

史上最強の哲学入門 飲茶 マガジンマガジン【2010】

 

哲学のテーマをテーマごとに分けて哲学者ごとに時系列にまとめて、その主張を8ページ前後ずつにまとめた哲学入門の解説書。

作者の飲茶氏は脱サラから起業したらしく、学者ではないが、そのためか語り口はとても平易で分かりやすく、どんな活字嫌いでもその骨子を理解できるであろうレベル。

 

ただし、その書き方には大きな特徴がある。「バキ」成分が非常に強い。

「バキ」シリーズは漫画好きなら誰でも知っている、代表的な格闘マンガで、飲茶氏はその大ファンのため、本書の随所(というか全般)にその要素が織り込まれている。前書きは大半がバキの有名シーンのオマージュである。

ただし、それらは内容に触らない形に限られているので、バキシリーズを知らなくても本書の理解に障りは無い。知っていればクスリとし、知らなければ一部のハイテンションに少しだけ首をかしげるくらいのはず。

 

長くて小難しくて装いだけご立派な哲学書が馬鹿らしくなるほどの名著。単純な読み物としても入門書としてもオススメ。

2017年10月24日カテゴリ:本

「文化の樹を植える」 函館 蔦屋書店

【データ】

所在地:北海道函館市

アクセス:電車 桔梗駅から約徒歩30分

 * その他バスなどのアクセスも非常に悪い

地上2階(延床約9500㎡)駐車場650台

郊外複合施設 テナント:スターバックス、ファミリーマート、レストランFUSU、カルディなど

基本営業時間:7:00-25:00

 

【特徴】

建物のコンセプトは「文化の樹を植える」で2014年グッドデザイン賞などを受賞しているシンプルで親しみやすいものになっている。

書籍スペースの面積は不明だが、3000㎡前後の超大型級の規模と推測される。

1階フロアを貫く直線でまとめられた雑誌売り場や、小部屋に区切られた空間で360度に本棚を配した空間、高さや配置をずらして曲線を作ったり、連続性を変えたり・・・など棚やレイアウトは独創性にあふれながらも機能を損なわない他に例のない秀逸な造り。

休憩、勉強スペースなども多数設けられており、テナント構成なども含めて快適に長時間滞在できる環境になっている。

 

【感想】

全国様々な書店を巡ってきたが、ベストを挙げるならここ。

とにかく棚のレイアウトが美しくて楽しいので歩くだけでも飽きない。それでいてストレスを感じさせる余計なものが無いので、店内をグルグル回っているだけで、いくらでも時間を過ごせてしまう。

これだけ行き届いていながら、規模は超大型級で探し物にも十分応えてくれるのも嬉しい。

 

この函館蔦屋書店の素晴らしさを解き明かすのは当HPのテーマの一つでもある。今後の研究報告をお待ちいただきたい。

 

それにしても、こんな素敵な書店があるなんて、函館市民が羨ましい。函館を訪れた際は観光リストの上位に入れていただきたい。ただし、唯一の弱点、アクセスの悪さには注意が必要。大人しく函館駅からタクシーが正解。

(2017年9月6日訪問)

 

【関連書籍】

「文化の樹を植える。 「函館蔦屋書店」という冒険」  楽園計画

 函館蔦谷書店の設計やコンセプトを解説した一冊。実は完成する前に発行されたものだが、同書店をよく知るうえで欠かせない一冊。

 

2017年09月11日ランク:☆☆☆カテゴリ:本屋