「『社会調査』の過半数はゴミである」 「社会調査」のウソ
「社会調査」のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ 谷岡一郎 文藝春秋【2000.6】
【概要】
谷岡 一郎は、日本の社会学者で学校法人谷岡学園理事長。大阪商業大学学長・総合経営学部教授。
本書ではタイトル通り「社会調査の過半数はゴミ」と称し多数の社会調査を実名で批判し、何故ゴミか、どうゴミかを誰にでも分かる平易な言葉と論理で説明する。
実例 → どこが間違いか考えてください → こういう理由でここが間違っています。ここはこうするべきです。 という明快な構図を繰り返す。
さらにゴミを生み出す背景を解説、対策として「サイテーション・インデックス」やリサーチリテラシー教育などを提唱する。
【感想】
何よりもその社会調査批判の解説の分かりやすさと妥当さが群を抜いている。
この種の本では、例えばアマゾンでは熱心な揚げ足取りにいそしむ暇そうなレビューが不必要に目につくものだが、それすらほとんど見当たらない。
そして、その社会調査に潜んでいる誤りの多さと巧妙さ、悪質さに驚かされる。これを読んだ直後から新聞や記事を読む目が変わること間違いない。
いつか当社で正社員を雇い入れることになった時は必ず当書を読ませるようにしたいほど貴重な知識を与えてくれる。。
ただ一つ残念なのは口が悪いこと。タイトルの「ゴミ」といい、冒頭で「この本は少々過激な内容である」と述べるなど、ゴミ社会調査を躊躇なく批判・罵り・挑発を容赦なく叩き込む。大学の学長がこれでいいのかというレベルで、この点では拒否反応を示す方がいても無理はない。
やっぱり社員教育に使うのは少し考えたほうが良いかもしれない。
やや古い本だが、その説得力は一切色あせない。作者が提唱するように、リサーチリテラシーとして誰もが読むべき一冊。