「私たちのいなくなった世界で、次の住人を待ちながら。」 人類が消えた世界

人類が消えた世界 アラン・ワイズマン 鬼澤忍訳 早川書房【2009】

【概要】
 アラン・ワイズマンはミネソタ生まれのジャーナリスト。

 本書では、「もし人類が突然地球から姿を消したらどうなるか。」建物は?動物は?自然は?といった疑問を様々な証言を元に様々な視点から予測し、人類が今までにしてきたことを新たな視点で考えさせる。
 
 基本的な構成としてはあるテーマ(例えば原生林、ビルなど)ごとに①それができる前の環境②人類によって変えられた内容③それが人の手で維持される方法(もしくは壊されている内容)や現状 などを説明したのち④人類が消えたらそれがどうなるかを述べる。

 テーマは自然、ビルや原子炉などの人工物、動物など多岐に渡る。
 文体は典型的ないわゆる「翻訳もの」で独自のクセは普通にあるため、好みが分かれるところ。

【感想】
 長い。文庫で500ページ弱の容量はともかく、問題は肝心の「人類が消えたらどうなるか」が短いことにある。全体の割合で行けば恐らく3割ぐらいしかなく、そこにたどり着くまでの(上の内容の)①~③が長い構成のせいで、全体が間延びして長く感じてしまう。
しかし、耐えた末にたどり着いた待ってましたの「人類が消えた世界パート」の記述は面白い。斬新な展開も多く、テーマによっても大きく異なるため、飽きない。前フリが長いことと、翻訳もの独自のドライな文体で驚くような内容を書き切っているため、中々ショッキングだったりもする。
好みは分かれるが、骨太のノンフィクションに飢えているならアリ、の上級者向けの一冊。

【猫情報】
 まさかの展開。我らのおネコ様が捕食者の一例として参戦なさっておられる。
猫は「人間から絶えず餌をもらっていても、狩猟をやめない」強力な捕食者であり、ウィスコンシン州の田園地帯では約200万匹の放し飼いのネコが多ければ年間2億羽以上、アメリカ全土では数十億羽の鳥を殺しているとされる。ネコやりすぎ。
しかもネコは人類が消えた世界でも生き残る。恐るべし。ネコ最強。

2017年11月10日|日記:本